

改札を抜けた あなたの背中を
呼べる距離なのに 呼ばずに歩いた
信号が青へ変わる数秒だけ
私たちは同じ方向を向いていた
「またね」のあとに残ったものを
帰り道ずっと考えている
言葉にしたら小さくなりそうで
今日も答えだけ持ち帰った
あなたと私の間には
まだ名前のない場所がある
近づけば少し遠くなって
離れれば妙に近くなる
言わなかった一言ばかり
夜になるほど鮮明になる
たぶん恋より曖昧なまま
行間だけが熱を持っている
午前零時前 届いた短い文字
用事なんてないことくらい分かってる
句点ひとつの置き場所だけで
嬉しくなったり 不安になったり
入力中の表示が消えるたび
知らない物語を作ってしまう
送られなかった言葉のほうを
私はいつも信じたくなる
駅前の店はもう閉まりかけて
窓に二人の影だけが残る
あなたが笑えば 少し遅れて
私も同じ理由で笑っていた
肩が触れそうな狭い歩道で
なぜか歩幅だけ丁寧になる
偶然みたいに並んでいるけど
どちらも避けていないことを知ってる
あなたと私の間から
少しずつ余白が消えてゆく
何気なく選んだ帰り道が
昨日より少し長くなる
話したことより話さないことを
私たちは覚えている
恋だなんてまだ呼ばなくていい
ただ隣だけ空けておいて
本当はもう気づいている
沈黙は
何もない時間じゃない
振り向く速度も
名前を呼ぶ声も
別れ際の二秒も
全部
言葉より先に
答えてしまっている
あなたと私の間には
もう戻せない温度がある
触れていないのに分かるくらい
同じ夜を近く歩いている
「好き」と言えば終わる何かと
「好き」と言わなきゃ始まらない何か
その境目で立ち止まったまま
あなたが少しだけ笑った
だから私も
何も言わずに笑った
交差点
青になる
あなたが歩く
私も歩く
少しだけ
昨日より近い
この続きを
空けておくから。
- Lyricist
narumina
- Composer
narumina
- Recording Engineer
narumina
- Vocals
narumina

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Nameless Place
narumina



