重く頭にのしかかる
黒くぶ厚い雨雲が
空に蓋をしていることに
誰も何も言わなくなった頃
いつの間にか降り出した雨は
町を塗りつぶしてゆく
いち早く気付いた野次馬達は
傘も差さずに通りへ飛び出した
灯り片手に窓から身を乗り出した
人はその目を疑った
虹が落ちてきたのかと思うほど
町は七色に輝いていた
とろみを帯びたその雨は
人の肌を潤し
同時に心も潤した
みんな口を揃えねぇ
「ねぇ綺麗でしょ私綺麗でしょ」
「ねぇ綺麗でしょ私綺麗でしょ」
空はまばらに赤黒く
今が朝なのか夜なのか
時の流れは止まったかの様
人は虹の雨に無我夢中
私はそれに気づいていた
最早この町はただの水溜まり
上の奴らが垂れ流す
工業廃油の廃棄場
綺麗に見えたのは最初だけ
油の濃度が薄かっただけ
いち早く気付いた野次馬たちの
瞳に油膜が張っただけ
次第に黒くなる雨に
他の奴らも気づいていた
がしかし今更引き返す
事など出来やしない
だから「綺麗だよ みんな綺麗だよ」
だから「綺麗だよ みんな綺麗だよ」
これが正しかったのかはわからない
結論を言えば今私は独り
「君らにゃ頭が足りない」と
言ったらムキになられてね
かつて人だったはずの真っ黒な
生き物たちは私に詰め寄って
雨と己の美しさ
熱く熱く熱く語った刹那
奴らの体が燃え出した
恐らく油と熱のせい
やっと目を覚ましたのかい
でももう遅いよ遅すぎた
火を消そうと悶える姿は
さながら激しく踊るよう
「ほんとだ綺麗だね とても綺麗だね
ほんとだ綺麗だね とても綺麗だね」
太陽はいつ出てくるのか
古い考えを燻ぶらせる
生きた化石達を早く
焼き尽くしておくれ
「それにしても綺麗だな 嗚呼 綺麗だな
君たち綺麗だな 本当に綺麗だな」
私の目の中で奴らは
燃え尽きることなく
闇の中
七色に輝き続ける
- 作詞
日陰三〇
- 作曲
日陰三〇
日陰三〇 の“油帷子”を
音楽配信サービスで聴く
ストリーミング / ダウンロード
- 1
生けるお人形
日陰三〇
- 2
花の火遊び
日陰三〇
- 3
レム睡眠
日陰三〇
- 4
三億年生きる地学屋さん
日陰三〇
- 5
オブラート
日陰三〇
- ⚫︎
油帷子
日陰三〇
- 7
もしや、かしら、どくろ
日陰三〇
- 8
所の法に白羽の矢
日陰三〇
- 9
砂場
日陰三〇
- 10
狂う頭くる渦Cruise
日陰三〇
- 11
ガセのうわさ
日陰三〇
- 12
言語学者による、俗に言う"言葉の乱れ"についての見解を交えた挨拶
日陰三〇
- 13
ききなし
日陰三〇
- 14
社風は無風
日陰三〇
- 15
群発トリップ
日陰三〇
- 16
蟲の孔
日陰三〇
- 17
雨漏惨禍『有頂天』 (Ver.恥知らず)
日陰三〇
- 18
天傘賛歌『輻射点』 (Ver.恥知らず)
日陰三〇
- 19
遠野音' (Ver.恥知らず)
日陰三〇
- 20
酔々日 (Ver.恥知らず)
日陰三〇
- 21
踊ろぉドロシィ (Ver.恥知らず)
日陰三〇
- 22
昼下がりの動物園 (Ver.恥知らず)
日陰三〇
- 23
爪弾き (Ver.恥知らず)
日陰三〇
- 24
暴日方警報 (Ver.恥知らず)
日陰三〇
- 25
梅ノ毒 (Ver.恥知らず)
日陰三〇
- 26
もくもく恋 (Ver.恥知らず)
日陰三〇
- 27
おでって!お手製Odyssey (Ver.恥知らず)
日陰三〇
作詞作曲歌演奏、鳴かず飛ばずの音楽屋こと日陰三〇による自作自演集。