

あなたが好きだと言った
白いワンピース
似合うねって笑った声だけ
まだ夏の中にいる
サンダルを脱いで
焼けた砂へ
今日はひとりで
海まで来た
[Verse 1]
熱すぎる砂を逃げるように
波打ち際まで走った
避けたつもりの青い波が
白い裾まで濡らしてく
「あーあ」って声が出て
誰もいないのに笑ってた
潮で少し固くなった髪
甘い日焼け止めの匂い
去年ここで撮った写真
消したはずなのに
別のフォルダに移しただけって
自分だけは知っている
波が足あとを消すたび
少し羨ましくなった
[Chorus 1]
白いワンピース
風の中でふくらんで
あなたが好きだった色だけ
あの日のまま眩しい
言わなかったことが
波音に紛れて浮かんでは
口にする前に
また沖へ戻っていく
振り返れば
ふたつだったはずの夏に
ひとりぶんの影だけ
長く伸びていた
[Verse 2]
小さな貝殻を見つけて
何となく写真を撮った
送る癖だけが残っていて
あなたの名前まで開いた
「元気?」
三文字打って
全部消した
画面を閉じたその瞬間
海の家から笑い声
ラムネの瓶を傾けたら
雫が胸元に落ちて
白い布に
薄い染みがひとつ
慌てて指でこすって
余計に少し広がった
なぜだかそれを見て
また笑ってしまった
[Pre-Chorus]
綺麗なままでいたかったのは
この服だったのか
思い出だったのか
考えていたら
次の波が来て
答えごと足首を濡らした
[Chorus 2]
白いワンピース
もう裾には砂がついてる
あなたならきっと
気にしたかな
そんなことまで
まだ考えてしまう
さよならしたくせに
消せないものばかり増えて
忘れたい夜ほど
細かいところまで覚えてる
ポケットの貝殻を
捨てようとして
結局そのまま
歩き出した
[Bridge]
遠くで入道雲が
少しずつ形を変えている
同じものを見ていたはずなのに
覚えている色は違うのかな
あなたはもう
この海を見ても
わたしを思い出したり
しないのかな
……それならそれでいい
そう思った直後に
少しだけ泣いた
涙なのか
海なのか
頬についた塩を
手の甲で拭った
[Final Chorus]
白いワンピース
夕陽の色を透かしている
胸元の小さな染みも
裾についた砂も
もうそのままでいい
あなたが褒めてくれた服を
今日も選んだ理由なんて
最後まで
わからなくてもいい
裸足の足もとへ
また新しい波が来る
さっきまであった足あとが
ひとつずつ消えていく
わたしはそれを
途中まで見て
サンダルを拾った
[Outro]
帰り道
濡れた裾が
膝に少し張りついている
髪は潮風でぼさぼさで
白い服には薄い染み
写真を一枚だけ撮った
海じゃなく
夕陽でもなく
砂のついた
自分の足もとを
送る相手は
もう開かなかった
振り返ると
足あと半分
波の中
残りもたぶん
すぐ消える
それを確かめずに
歩いていった
背中から吹いた風で
白いワンピースが
一度だけ
大きくふくらんだ
- 作詞者
HITOKOE
- 作曲者
HITOKOE
- プロデューサー
HITOKOE
- ボーカル
HITOKOE

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白いワンピース
HITOKOE
夏の夕暮れ、ひとり海岸を歩く女性。
身にまとっているのは、かつて大切な人が「似合う」と言ってくれた白いワンピース。
消したつもりの写真、送らなかったメッセージ、濡れた裾、砂のついた足あと。
忘れようとしているのに、何気ない瞬間ほど鮮明に蘇ってくる思い出。
それでも彼女は、過去を無理に消そうとはしません。
白いワンピースに残った小さな染みも、胸の奥に残った未練も、そのまま抱えて歩いていく。
波に消えていく足あとを最後まで見届けることなく、静かに海をあとにする――。
『白いワンピース』は、失恋を「忘れる」物語ではなく、忘れられない気持ちも自分の一部として受け入れていく、ひと夏の小さな再出発を描いた楽曲です。
潮の匂い、夏の風、夕陽に透ける白いワンピース。
少し切なく、それでもどこか温かな夏の終わりを感じてください。
アーティスト情報
HITOKOE
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