

案山子の方法
この歌は
ヴィンセント・ヴァン・ゴッホが
なぜ死んだのかを語らない
それは医者や神父や歴史家に任せればいい
ここで歌いたいのは
ただ
どんな“姿勢”で
世界からいなくなったのか
その方法だけだ
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ある日
彼は麦畑の奥で
自分によく似たものを見つけた
名前を持たず
動かず
鳥にさえ本気で嫌われない存在
案山子だ
ぼろ布のシャツには
理由のわからない穴が空いていて
風がそこを通り抜けるたび
誰かの呼吸の名残のような音を立てた
近所の子供たちは
退屈と偶然を装って
遠くから
何かを飛ばしていた
当たったかどうかは
誰も確かめなかった
________________________________________
ゴッホは
キリストの生をなぞる本を読み
かつて説教壇に立ち
苦しみは与えられるもので
選ぶものではないと
信じていた
自分の手で終わらせることは
彼の倫理に
どうしても収まらなかった
だから考えた
誰も“殺した”と気づかず
誰も“死んだ”と
言い切れない方法を
________________________________________
最後の絵を描き終えた日
彼は確信した
これ以上
色は増えない
線も迷わない
肉体は
役目を終えた道具のように
静かに置いていけばいい
光るものは
すでに
キャンバスの上に残った
テオ
ヨー
あとは頼む
彼らなら
この光を
時間の中で生かせる
________________________________________
その夜
ゴッホは
案山子の真似をした
畑の真ん中で
両腕を広げ
恐れも抗議も示さず
ただ
立つという方法
撃たれても
倒れない
声を上げない
痛みすら
風の一部として受け取る
そうすれば
誰も
境界線を越えたことに
気づかない
________________________________________
彼は
殺されたのでもなく
自ら終わらせたのでもない
ただ
世界が放つものを
一身に受け取る
役割に
なっただけだ
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この歌は
ヴィンセント・ヴァン・ゴッホが
なぜ死んだのかを語らない
ただ
彼が
案山子になるという
方法を選んだ
その姿だけを
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シュハリヘチカン
長野県安曇野で音楽活動中。ありとあらゆるジャンルに挑戦中です。
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