或る秋の夕暮れ
幼馴染と裏の道路で遊ぶ
隣の村長の家を通り越し
身長より高い
藪の中で遊ぶ
刈入れで忙しい
耕運機の音
脱穀機の音が
茶色い空に溶けてゆく
そして見つけた
アレを見つけた
カマキリの卵を見つけた
茶色い球体
小さな球体
それまるで
僕らにとっては
地球の如く
右肩に下げた
虫籠に
入れた入れた
カマキリの卵
5時の放送が
カラスと一緒に
飛んでくる
家に持ち帰った
虫籠を持ち帰った
縁側の端の方に
そっとそっとただ
置いておく
それからどれくらい経ったろうか
事は起きてしまった
或る朝起きたら
家族が大騒ぎ
家中、カマキリの赤ん坊だらけ
透明がかった茶色い茶色い
カマキリの赤ん坊が
絨毯の上をうじゃうじゃ這いずり回る
緑色の虫籠の隙間から
どんどんどんどんと奴らが
這い出して来る
殺戮を始める
殺戮を始める
人間が殺戮を始める
掃除機で吸い取り
蝿叩きで潰し
カマキリの赤ん坊を殲滅する
こうして平和は
取り戻された
偉大な
偉大な
偉大な
人間の力よ
・・・
夜になっても止まらない
脱穀機の音が
黒い黒い秋の夜に
反射している
黄色いお月様が
そっと呟く
カマキリの卵は決して
虫籠に入れて持って帰ってきてはいけない
- 作詞
鈴木 諭
- 作曲
鈴木 諭
鈴木 諭 の“説話、カマキリの卵は決して虫籠に入れて持って帰ってはいけない”を
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ストリーミング / ダウンロード
- 1
空っぽの青い犬小屋
鈴木 諭
- 2
じゅんさいになった猫
鈴木 諭
- ⚫︎
説話、カマキリの卵は決して虫籠に入れて持って帰ってはいけない
鈴木 諭
- 4
生も死も畦道の上
鈴木 諭
- 5
夜と和解
鈴木 諭
- 6
海を渡りたかっただけなのです。
鈴木 諭
- 7
友川カズキを聴きにゆく
鈴木 諭
- 8
ささらの夜
鈴木 諭
- 9
長面三兄弟が忘れられた日
鈴木 諭
- 10
遠い昔の冬の空
鈴木 諭
- 11
月曜日の雪を知っている
鈴木 諭
- 12
たった一つだけの記憶
鈴木 諭
- 13
私は婆さんの死を知らない
鈴木 諭
- 14
筋子と味噌
鈴木 諭
- 15
明日の準備
鈴木 諭
アーティスト情報
鈴木 諭
地獄の詩世界と秋田弁ブルースを唄う、ただの秋田県人。じゅんさい王国(旧・山本町)出身。2023年頭より弾き語りを本格始動し、代表曲である『犬の川』はライブ演奏を通し多数の人間から「これは犬の楢山節考だ」などと激賞を得た。 また秋田弁ブルースは「何を言ってるか全く分からないけど面白い」等の声を集め、ライブの重要要素の一つとなっている。
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