さてもその夜は極月十四日
夜討ちの勝負はかねての計略
うち発つ時刻丑三つの
軒の棟木に降り積もる
雪の明かりが味方の松明
鎖帷子一着なし
籠手脛あては覚えの手の内
錣頭巾(しころずきん)な頭に頂き
皆一様な出立ちにて
地黒の半纏
段だら筋
白き木綿の袖印
白山足袋に武者わらじ
乱れる人影 刃の光
無数の灯火が煤煙(すす)を吐く
絶え間無く明滅(めいめつ)
秩序の破壊
惜しからぬ命をもって
今宵の様を
其れこそが希望となりて
銀の短冊襟につけ
何の誰がし享年何歳
君恩のため討ち死としたため
投げ鎌
投げ槍
縄梯子
半弓
薙刀
管槍
手槍
中でも大高源五殿
得てたる掛矢引っ提げて
手もなく砕く表門
『退れっ(すされ)! 曲者っ』
豹のように躍りかかって来た刃
向き直り炬(きょ)のような眼をして
振りかぶる大太刀
黒小袖の下に
燃えるような両面
紅の袖を重ね
大太刀の旋舞が稲妻を描く
袖裏から牡丹のように
緋が狂っている様は圧巻
百絃の琴を一時に断つ
風鳥の様にその影は
築山へ駈けのぼって行く
復讐訪問の第一撃
金色の采配は人々の潮を支える
もうそこ此処には
槍が走り刃が飛び
あたりの雪は泥か血か
踏みにじられては乱戦を展げて行く
『亡君の御無念ばらしに推参』
『御首級を頂戴に参ったり』
打ちやぶる内玄関の戸
その勢いの凄まじき
いかなる天魔はじゅんも
おもてを向くべきようぞなし
雪ばかりか外には月も冴えていた
邸の中を
雪の中を
夜鴉のように疾駆している
黒い人影と刃影
綿のように厚ぼったい梢の雪が
ぼたぼたと裲襠(かいどり)の肩へ
落ちては散った
乱れる人影 刃の光
無数の灯火が煤煙(すす)を吐く
絶え間無く明滅(めいめつ)
秩序の破壊
惜しからぬ命をもって
今宵の様を
火の手も煙も見えやしないが
叫喚の旋風 不審(いぶか)る目(まなこ)
右手(めて)の直槍(すぐやり)の穂の先には
生々しく滴るものが
蛭巻(ひるまき)まで血に塗れて
駈け捨てられ蹴捨てられ
- 作詞
Suicide methods
- 作曲
Suicide methods
蠱毒 の“忠臣蔵”を
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