Lyric

改札の風が　髪をほどいた

未完成の手紙　封も切れないまま

踏切の音に　胸がほどけて

言えなかった名前だけ　唇に残る

古びた切符を　しおりにして

昨日みたいな遠い日を　読み返す

ホームの端に　並ぶ影法師

笑い声だけが　色を持っていた

淡い水色の　傘が揺れて

さよならの代わりみたいに　雨が降る

腕時計の針　止められずに

戻り道だけを　なぞっていた

「また会えるよ」って　言えなかったから

心の引き出しに　鍵をかけた

呼びかけた声は　空に溶けて

見えない明日へ　手を伸ばしていた

君がくれた　ささやかな勇気が

迷うたび　足もとを支えた

会えない日々でも　消えはしない

一枚の写真よりも確かな記憶

花びらの栞　香りだけが

教室の窓のように　夢を開く

黒板の隅　小さなサイン

誰にも気づかれない　秘密の合図

置き去りの言葉　拾い集めたら

雨上がりみたいに　息ができた

呼びかけた声は　雲を越えて

曇ったガラスに　君を描いてた

泣き笑いの　不器用な二人が

離れても　同じ朝を見ていた

会えない日々でも　薄れないで

手の温度みたいに　そっと続く

もしもあの時　踏み出せたなら

別の地図を　広げていたかな

だけど今なら　分かる気がする

悔しさよりも　ありがとうが先に来る

呼びかけた声は　風に乗って

見えない君へと　届いてゆく

君がくれた　ささやかな勇気で

ひとりでも　景色は変えられる

会えない日々さえ　抱きしめたら

新しい私に　やっと会えた

改札の風が　背中を押した

未完成の手紙　そっとたたんで

次の季節へと　歩き出していく