Cassette Gadget 1983-1984のジャケット写真

歌詞

深紅の帆

岩下啓亮 Sardine

それは古い航海図

パパのにおいのしみついた部屋

月の光に映された影

停泊中の大きな船

寄せてはかえす偽りは

荒くれ男を吞みこんだもの

少女が最後にみたものは

大きな背中とコーンのパイプ

深紅の帆をかかげた船は

群青色の瞳の中に

そして月日は流れて

幾千の夜は来てはさり

眠りの砂に埋もれた

放りだされた玩具の船

少女の夢は晴れた日曜日

大きな胸に抱かれる夢

星を見あげてはあなたの町が

近づいているのを確かめている

深紅の帆を風になびかせて

緑の海原かけぬけてゆく

それは古いアルバムの

やけてしまったポートレート

あなたを乗せて旅立とう

失った夢をとり戻しに

  • 作詞者

    岩下啓亮 Sardine

  • 作曲者

    岩下啓亮 Sardine

  • プロデューサー

    岩下啓亮 Sardine

  • レコーディングエンジニア

    岩下啓亮 Sardine

  • シンセサイザー

    岩下啓亮 Sardine

  • ボーカル

    岩下啓亮 Sardine

  • バックグラウンドボーカル

    岩下啓亮 Sardine

  • ピアノ

    岩下啓亮 Sardine

Cassette Gadget 1983-1984のジャケット写真

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私が多重録音を始めたのは1983年、千代田区神田にあったプレイヤーズイン楽器店に臨時雇いで勤め始めてからだ。店長の南山氏の好意で閉店後「楽器の扱い方を覚えるため」自由に使えることになった。その頃に録音した作品を今回のアルバムに収録した。
CD-R等にデータを残していないので、先日TEACのカセットデッキを購入してテープをプレイバックしてみた。ところが経年劣化がひどく、何曲かはデジタル化を断念せざるを得なかった。1983年に楽器店で録音した前半の6曲(『Walking Tempo』と名づけた)はリリースの断念も考えたが、これも記録だと割りきることにした。
後半の6曲は1984年、世田谷区代沢のアパートで録音したものだ。はなやかなシモキタに住んでいたが、誰とも連帯できず、孤独にさいなまれながら音楽をつくり続けていた。その証拠に、テープのラベルには『世界中に失恋』と題されていた。
おそらく多くの人が、この12曲の音源を聞きづらく感じるだろう。歌詞も未熟だし、演奏はミスだらけだし、歌の音程も怪しげだ。私自身あまり心地よくは聞けない。けれども私、岩下啓亮の音楽史を語るにおいて、これは欠かすことのできない資料なのである。

アーティスト情報

  • 岩下啓亮 Sardine

    鰯こと岩下啓亮 Sardineです。1983年から2002年までの19年間で、ひとり多重録音した楽曲を約150曲発掘しました。これらを8枚のアルバムにまとめて、2024年に順次リリースしました。 2025年は、前年に配信したアンソロジーの代わりに、年代順に編集し直したアルバムを発表します。その第一弾として、1989年から1995年の間に制作した楽曲をまとめた『Windsor knot』を1月25日にリリースしました。2月には、1983年から1984年の間カセットテープに録音した音源を収めた『Cassette Gadget』の2タイトルをリリースします。 ロマンチックと薄情と情熱の混淆、とりとめもない不安と届かぬものへの憧憬を描いた、オールディーズだけどもエヴァーグリーン。バラエティ豊かな鰯の音楽を、ぜひお聞きください。

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