OWL

「apoptosis」に続き2ヶ月連続で発表される新曲 「OWL」。終始“いいよ”と語り掛けるように歌われる歌詞は、聴くものの受け取り方次第で、肯定にも否定にもなる。そのまま文字通り肯定的にも 捉えられるし、否定的に捉えれば、もういいよ、とバッサリ切り捨てられるような冷たさを感じることもできる。しかし、素直な気持ちで耳を傾けると、この楽曲を通して感じるのは、溢れる優しさだ。ともすればネガティブな言葉に惑わされてしまいがちな日常に於いて、とても心が救われ、癒される。なぜかというとシルクのような耳障りの良い音が、言葉を肯定的なベールに包んで届けてくれるから。そして、まどろみの中でゆったりと流れる旋律に寄り添うギター、ベース、ドラム。 そこから生まれる幻想的なサウンドスケープには、心が軽くなり遠くまで連れて行かれる。アレンジは音数が少なく、それぞれのパートが派手なことを少しもやっていない。淡々とリズムを 刻むドラムとベース、その周りに散りばめられ幾 重にも重なって行くギター。クライマックスに向けて徐々に熱量を上げる演奏と力を込めて歌われるボーカル。それらが、聴くものそれぞれのストーリーとなって行く。真っ暗な夜、月灯りの下 で佇む真ん丸な目をしたフクロウの気持ちになって聴いてもいいし、部屋の窓から月を見上げる少年の気持ちになって遠い世界に思いを馳せてもいい。優しいメロディと演奏、肯定的な言葉に目を 閉じて、チルアウトしていく心地良さ。この曲を聴くと、Emuがいかに心象風景をスケッチするのが上手いバンドかを知ることができる。
文：岡本貴之