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深夜の最終列車に滑り込むときのリズミカルな鼓動、全速力で階段を駆け上がったあとの心地よい疲労感と、言葉にできない解放感を、90年代の瑞々しいパワー・ポップ(Power-pop)の骨組みに落とし込んだ、BPM138で物理的に加速していく(Accelerating)極めて爽快で人間味あふれるローファイ・インディー・ロックです。楽曲を特徴づけるのは、完璧に制御された現代のデジタルポップスを拒絶する「人間の肉体的なゆらぎ」。ヴァースではあえて平熱のハーフタイム・グルーヴ(Deliberate half-time feel)を維持しつつ、ジャストのタイミングよりもわずかに「早く突っ込んでくるスネア(Early pushed snare)」と、フレーズが進むにつれてバンド全体が有機的にトップスピードへと巻き上がっていく加速のパラドックスが、胸の高鳴りを体現しています。
楽器構成は、高音弦が豊かにきらめく「アナログのコーラス・ペダル」を通した2本のエレキギターによる、広がりのあるI-V-vi-IV-iiの王道循環コードと、指先の温もりと低いフレットノイズ(Low fret buzz)をそのまま残した太く丸いベースラインのみ。シンセサイザーや大迫力のデジタルビルドアップを徹底的に排除し、90年代のMTR録音を彷彿とさせる「カセットテープ特有の温かい飽和感(Cassette saturation master)」が、深夜の街を走るようなリアルな質感を演出します。ボーカルはマイクから18インチ(約45cm)の距離で捉えられた、ピッチ補正(オートチューン)無しの生々しい男性バリトンのダブルトラック。走ってきた直後の「リアルな息切れのノイズ(Running breath artifacts)」や、2番のヴァースでギタリストが不意に弾いてしまった「完全に間違ったコードの音(Intentional wrong note)」すら補正せずにミックスに残すことで、今この瞬間の圧倒的な実存感を提示します。中盤のブリッジでは、ハイハットから生々しいアコースティックのライドシンバルへと移行して一気に視界を広げたのち、突如としてギターや高域の音が全て消失し、ベースとキックだけになる「ハーフバンド・サブトラクション(半バンドの引き算)」を敢行。聴き手が息を呑んだ刹那、文字通り光の洪水のようにすべての音が大爆発(フルスペクトル・エクスプロージョン)します。最後は解決のコードを鳴らさず、3拍目の途中で言葉ごとプツンとリミッターがゲートを閉じるように遮断され、残響を1ミリも残さずスパッと完全な真空の静寂へと着地する、疾走の瞬間を永遠に閉じ込めた傑作トラックです。
Negi0723は、感情の揺らぎと都市の空気感を繊細にすくい取るミュージシャン。 エレクトロニックとポップ、オルタナティブの要素を横断しながら、 きらめきとノスタルジー、衝動と内省が共存するサウンドを描き出す。 印象的なメロディと映像的なリリックが特徴で、 一瞬の感情や夜の断片を切り取るような楽曲世界は、 リスナーそれぞれの記憶や物語と静かに共鳴していく。 ジャンルに縛られず、感覚を信じて音を紡ぐ。 Negi0723の音楽は、日常と非日常の境界線をやさしく溶かしていく。