柴犬のこま
僕が生まれた時からそこにいた
寝てる時触ると 噛みつくんだ
僕が散歩に連れて行こうとすると
お前とは嫌だってぐずられた
丸い尻尾に茶色い毛
さんかくの耳
偉そうなヒゲ
こまが鳴いた
爺ちゃんと散歩
嬉しくて鳴いた
僕の時は嫌がるくせに
柴犬のこま
夏でも毛皮を着てるから
いつも暑くて大変そうだ
兄ちゃんとキャッチボール
僕は下手くそだから
いつもこまを怖がらせた
こまが鳴いた
危ねえだろって
やめろよって鳴いた
下手くそって鳴いた
こまが鳴いた
窓ガラス割れて
僕ら父さんに怒られて泣いた
小5の夏
こまが鳴かなくなった
ご飯も全く食べなくなった
こまはもう長く生きられないって
お医者さんが言ってた
僕は泣いた
悲しくて泣いた
僕は泣いた
怖くなって泣いた
それからこまはいつも眠っていた
昼も夜も眠っていた
寝てる時に触っても
もう噛みつかないんだ
七夕の夜 大雨が降った
朝起きた瞬間
こまがもういないってわかったんだ
犬小屋の前に大きな大きなダンボール
爺ちゃんが言ってた
最後にこまは大きな声でないたって
何度も何度もないたって
母さんが泣いた
妹が泣いた
兄ちゃんが泣いた
僕は、、、
僕は一人暗い部屋で
普段読まないファミコンの説明書を
狂ったように何度も何度も読み返していた
ふっかつの呪文を入力すれば
ゲームはこの前の続きからスタートできるのに
悲しみはどこまでも空洞で
心は濡れた毛布に包まれたようだ
あれから随分と時間が流れた
今年もまた夏が過ぎていく
お前のいない日々がどれだけ
当たり前になっても
僕はずっと思っている
家族みんなで過ごしたあの日々を
傷付けたり壊したり
無くしたりしないように
こまがないた
こまがないた
こまは今もないている
- 作詞
小関 峻
- 作曲
小関 峻
- プロデューサー
小関 峻
- ギター
小関 峻
- ボーカル
小関 峻
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こまがないた
小関 峻
アーティスト情報
小関 峻
宮城県出身のシンガーソングライター。 昭和のフォークソングから影響を受けつつ、独自の世界観で構築された楽曲とノスタルジックな歌声が、「懐かしさ」と「新しさ」の両方を感じさせる。 路上ライブを行った回数は1000回を超える。
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