静物画のジャケット写真

歌詞

静物画

零壱ノ間

朝を測るようにカーテンをすかす

ビルの縁で 風が低く啼いた

机の上 キャップの外れたペン

「まだ描くの?」と 空気だけが問う

未完成のまま 鉛色の時間が流れ

塗り残した白が 部屋の真昼を照らす

“言葉”は手のひらの体温で溶け

跡だけが 紙に薄い湖を作った

呼吸する静物画

誰も覗かない キャンバスの底で

滲む輪郭が 鼓動を打つ

「終わりにしよう」と言わなかった

それだけで 僕はまだ ここに留まる

夜の帳 ネオンを黙らせる雨

無意味な傘を 肩で持て余す

「描け」と誰も命じないのに

描かないことに 怯えている

上書きするたび 色は鈍り

初めの線を 自分で迷子にした

けれど失敗じゃないとだけ

君に伝えたかった それが全部だった

塗り重ねた沈黙の下で

まだ乾かない絵具が 疼いている

未完成こそ本当だった

仕上げれば もう触れられないから

「このままでいい」 そう呟いて 息を継ぐ

「何になりたかった?」

鏡の奥で誰かが訊く

答えられない でも

筆を置いたまま見る白紙が

やけに確かな “今”だった

諦めた夢の 余熱で生きている

それでいい 誰も知らなくていい

声にしなかった色彩が

微かに 光を孕んで

今日もただ 静物画を温める

  • 作詞者

    nought

  • 作曲者

    nought

  • プロデューサー

    nought

  • ギター

    nought

  • ドラム

    nought

  • キーボード

    nought

  • ボーカル

    kuu

  • ソングライター

    nought

  • プログラミング

    nought

静物画のジャケット写真

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    静物画

    零壱ノ間

「静物画」は、「完成させること」や「何者かになること」へのプレッシャーに苦しむ全ての人へ贈る、内省的な曲です。
「完成=死、未完成=生」という逆説的なテーマを掲げ、結果ではなく、迷い、悩み、呼吸している“今”そのものに宿る静かな生命感や美しさを描き出しています。

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