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「The Color Chart Mixed Down Polyphony」ライナーノーツ
解説:フランシス金田成尾
パウル・クレーの名画「ポリフォニー」(1932年)に着想を得たアルバム The Color Chart Mixed Down Polyphony は、色を音で表現する大胆な試みだ。赤、青、黄色の三原色が音として現れ、徐々に混ざり合い、最終的には虹のような多彩な音世界へと昇華する。KNSIAUDIOSTOKER0720によるこの14曲のアルバムは、まるで音楽のキャンバス。クレーの絵画のように、色彩とリズムが交錯し、ポリフォニックな音のタペストリーを織りなす。各トラックは、色を「聴く」体験であり、音を「見る」旅だ。
アルバムは、赤(Aka)、青(Ao)、黄色(Ki)の純粋な三原色から始まり、それぞれ独自の音色で描かれる。トラックが進むにつれ、これらの色が混ざり合い、新たな色調—紫、緑、オレンジ、茶、銀、群青、そして最終的に虹—が生まれる。最終曲 Niji では、全ての色が融合し、鮮やかな音のスペクトルがリスナーを包み込む。
これは単なるアルバムではない。色と音のポリフォニーであり、感覚を超えた体験だ。それでは、トラックごとの世界に飛び込もう。
トラック解説
Siro(白) – 03:56
アルバムの幕開けは Siro。全ての色の総和である「白」を、透き通ったシンセとクリスタルな音色で表現。遠くで脈打つようなパーカッションが、色が生まれる前の静けさと無限の可能性を想起させる。キャンバスを広げ、これから始まる色彩の物語のプロローグだ。
Hai(灰) – 02:53
Hai は中立の色、灰色。スモーキーなアンビエントと微妙に不協和なコードが、色と色の間にある影のような存在感を描く。クレーの絵画のトーンの隙間を埋めるような、アルバム全体を繋ぐ地盤となるトラック。落ち着いた緊張感が漂う。
Ao(青) – 02:32
三原色の一つ、青。Ao は深い海や夜空を思わせるクールなシンセと流れるようなメロディで、静けさと内省を表現。冷たく澄んだ音色が、リスナーを広大な青の世界へと誘う。
Aka(赤) – 03:45
情熱の色、赤。Aka は力強いサウンドと温かみのある音色で、血の鼓動や炎の揺らめきを思わせる。エネルギッシュで鮮烈、このトラックはアルバムの心臓部だ。
Murasaki(紫) – 04:01
赤と青が混ざり合い、Murasaki が誕生。神秘的で深みのある音色が、夜の帳や紫水晶のような輝きを想起させる。ゆったりとしたテンポで、色の融合の美しさが際立つ。
Ki(黄) – 02:02
三原色の最後、黄色。Ki は太陽の光やひまわりのような明るさで、軽快なリズムと弾けるようなメロディが特徴。短いが鮮烈な印象を残し、アルバムに活力を注入する。
Midori(緑) – 02:54
青と黄色の混色、緑。Midori は森のざわめきや新芽の息吹を思わせる有機的な音で、自然の調和を表現。リズミカルでありながら穏やかな雰囲気が心地よい。
Orenji(オレンジ) – 03:10
赤と黄色が交わるオレンジ。Orenji は夕焼けや果実の温かみを思わせる、明るく親しみやすい音色。軽やかな音色とメロディが、ポジティブなエネルギーを放つ。
Chairo(茶) – 03:12
全ての色が混ざり合ったような Chairo は、土や木の幹のようなアーシーな質感。重厚なベースと繊細なハーモニーが、安定感と深みをアルバムにもたらす。
Usucha(薄茶) – 01:41
Chairo の延長線上にある Usucha は、より軽やかな茶色。抹茶のような繊細な音色が、短いながらも穏やかな余韻を残す。シンプルだが印象深い。
Ginn(銀) – 01:36
金属的な輝きを持つ Ginn。キラキラとした電子音とクールな音色が、色のスペクトルに新たな光沢を加える。短く鋭い、まるで光の反射のようなトラック。
Miziro(水色) – 01:56
青の軽やかな変奏、水色。Miziro は清涼感あふれる音で、澄んだ水面や春の空を思わせる。軽快で透明感のあるメロディが心地よい。
Gunnjyouiro(群青) – 02:49
深い青の極致、群青。Gunnjyouiro は重厚で荘厳な音色で、宇宙の深淵や夜の静寂を表現。アルバムのクライマックスに向けて緊張感が高まる。
Niji(虹) – 03:56
全ての色が融合する最終曲、Niji。虹の七色を思わせる多層的な音のレイヤーが、壮大で感動的なフィナーレを飾る。ポリフォニックな構造がここで完成し、色と音の旅は虹色の輝きで幕を閉じる。
The Color Chart Mixed Down Polyphony は、色と音の境界を越える実験であり、クレーのポリフォニーのように視覚と聴覚を融合させる試みだ。KNSIAUDIOSTOKER0720は、音のパレットで色を塗り、耳で「見る」体験をリスナーに贈る。このアルバムを聴きながら、目を閉じて色を想像してほしい。そこには、赤、青、黄色から始まり、虹へと至る無限の色彩が広がっている。