古い木橋を歩いてた
途中で竹を突き刺され
死んだ亀が二匹
向こう側から歩いて来る
釣人のおじさん
左手に持った網
「見せてやろうか?」
とにこやかに笑う
愉快げにおじさんは語り出す
縁日で売ってる緑亀が増えて
この川にも沢山いるんだ
ほら、こんなに大きくなっちゃってさ
あとこれ外来種なんだよ
本来いるべきものじゃ無いんだよ
亀の甲羅をぐっと押さえ
竹の棒を躊躇無く顔に突き刺すおじさん
赤黒くなる亀の顔
ぐじゅくじゅという
嫌な音が耳にへばりつく
ぼーんと亀を放り投げる
亀の死体が三匹
先ほどの亀がまだ生きていた
顔に竹が刺さったまま
バタバタと30センチほど進む
そして止まった
全てが止まった
全てが消えた
「オレは魚を釣りに来てるんだけどね
亀が釣れちゃうんだよね」と
おじさんは椅子に座り直し
缶コーヒーをグイッと飲んで
また釣りに興じ始めた
その日の茨城の空は灰色で
春の陽気とは程遠い
少し肌寒い風が吹いていた
土手の上に止まった黒い軽トラックの脇で
名前の分からない黄色い花が沢山咲いている
匂いを嗅いでみたけど
何の匂いもしなかった
串刺しにされた亀
串刺しにされた亀
外来種で殺される
串刺しにされた亀
- 作詞
鈴木 諭
- 作曲
鈴木 諭
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亀のいる木橋
鈴木 諭
外来種問題、と言うのを皆さんご存じだろう。定義を借用すると"もともとその地域にいなかったのに、人間の活動によって意図的・非意図的に持ち込まれた生きもののこと"である。無論、益は無く害だけの存在だ。だからと言って、その命をゴミの如く殺して良いのかとなると別問題である。本作『亀のいる木橋』は、氏が実際に遭遇したミドリガメに関する出来事を元に作られた衝撃作。命についての根幹的な命題を持ち、問いを投げかけるのだ。或る人は、同曲を聴いて「ガザの進行が浮かんだ」と言った。我々はこの曲に触れる事で、改めて"命"について考えなければいけない。
アーティスト情報
鈴木 諭
地獄の詩世界と秋田弁ブルースを唄う、ただの秋田県人。じゅんさい王国(旧・山本町)出身。2023年頭より弾き語りを本格始動し、代表曲である『犬の川』はライブ演奏を通し多数の人間から「これは犬の楢山節考だ」などと激賞を得た。また秋田弁ブルースは「何を言ってるか全く分からないけど面白い」等の声を集め、ライブの重要要素の一つとなっている。
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哥処 墨林庵