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KENJI IKEGAMI 『KANNON / RAVEN』

日本古来のエスニック・ミュージックとアンビエント/エクスペリメンタルを独自の世界観で融合する尺八奏者、KENJI IKEGAMIによる最新作がアナログLPでリリース。
テリー・ライリーの精神を継承するチェロ奏者の瀬藤康嗣、アイヌの伝統楽器ムックリの奏者UtaEとの共演による長尺曲を2曲収録。
Chee Shimizuプロデュース作品。




KANNON(観音)は、池上による尺八と、瀬藤康嗣による即興演奏を主体としたチェロのデュオ曲である。小川のせせらぎ、小鳥のさえずりのごとく静かに浮遊する鳴り物が竹林の風景を想起させるイントロダクションから、尺八のひと吹きがはじまる。尺八のロングトーンは残響を伴いながら積層され、ドローンを形成する。インスピレーションを得たチェロは奔放に旋律を重ね合わせていく。ふたつの楽器の音色と旋律は相反することなく、不思議な音像を描きながら静かに頂点へと向かい、やがてふたたび、静謐な竹林へ同化していく。
RAVENは、2021年に東京のおおばキャンオプ村で開催されたフェスティバル<Oneness Gathering>でのライブ・レコーディング音源である。アイヌの伝統民族楽器であるムックリを演奏するUtaEと、池上の尺八とのデュオ、すなわち、竹と竹の共演である。尺八の音色が持つ特有のふるえを随所に効かせながら、パースペクティブな音像を描いていく尺八のアンビエンス。その中央でムックリの奏でるビブラート音が太陽光線の如く降り注ぐ。





山に入り真竹を掘り出し、自ら制作した「地無し尺八」を吹くKENJI IKEGAMI。ブライアン・イーノの「Music For Airport」のように幾重にもレイヤーされた尺八のロング・トーン、テリー・ライリーの精神を継承するチェロ奏者、瀬藤康嗣の変幻自在な即興演奏が浮遊する近未来的ドローン・アンビエント「Kannon(観音)」。尺八が描くパースペクティブな音像に、UtaEが演奏するムックリのビブラートが太陽光線のごとく降り注ぐエスニック・アンビエント「Raven(渡鴉)」。虚無僧よりはじまる地無し尺八の歴史伝統に敬意を表しながら、あらたな息吹を吹き込むKENJI IKEGAMIの音楽は、太古と未来の時空を今に繋ぐ。(Chee Shimizu)
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虚無僧と地無し尺八
尺八は、日本の在来種である「真竹」から作られ、根の部分から7節を使用し、穴は5個(表4裏1)、上部を斜めに切り落としたシンプルなエア・リード楽器である。
江戸時代(1603~1867)に虚無僧が使用していた楽器として、日本では知られる。
虚無僧は、禅宗の一派である普化宗の僧侶で、有髪で半僧半俗の存在であった。彼らは尺八を法器とし、「吹禅」と称して尺八を吹くことを禅の修行としていた。
虚無僧の尺八は、竹の構造を巧みに活かし、竹に「寄り添う」かたちで響きを引き出している。これは、地無し尺八と呼ばれ、竹の内部を加工せずに節を抜いただけの状態で使用された。自然のままの内部の空気は、体内の空気と共鳴し、神秘的で生命力に満ちた音になるのである。
尺八の音は非常に繊細であり、わずかな管内の形状や質感、材質、また吹き方によって音質が変わる。個体差が大きく、歪である地無し尺八は、製作者が奏者に合わせて効率的に製作した楽器とは異なり、奏者が楽器に合わせながら演奏するため、長期間の鍛錬を要する。
この鍛錬とは丹田を煉り、呼吸を制御し、竹と人を「一体化」させていくことにある。そしてその状態は結果として、自他共に明確で偽りのない「音」としてあらわれるのである。
虚無僧は、自然と人の完全に一致した音の状態を「禅の境地」や「悟り」と捉え、その一音に森羅万象を込めようとしたのである。
身近な自然を使い、「音」を頼りに自己を高める行為は、現在に於いても尺八や曲と共に脈々と受け継がれている。そして自身もその流れの一端である。
このアルバムは、自身が長い年月を経て研究・制作した地無し尺八を用い、その実践を記録したものである。
池上健二
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アーティスト情報

  • KENJI IKEGAMI

    池上健二 尺八奏者、尺八製作者。 熊本の農家に生まれ、自然のなか昔ながらの生活様式で育つ。少年期から音楽に目覚め、ポップス、ロック、ハードコア、ヒップホップを聴く。高校時代、Massive Attackの『Mezzanine』をきっかけにクラブ・ミュージックに目覚める。クラブに出入りしはじめる。同時期にDJ活動を開始し、ハウス、ドラムンベース、アシッド・ジャズ、アブストラクト、トリップホップをプレイする。後に師匠的存在となるJazz BrothersのDJ Yama a.k.a. Sahibを熊本に招致し、イベントを開催。 1999年より福岡へ移住し、親富孝通りのクラブOD他でDJとして活動。HMVに入社するが数ヶ月でクビになり、その後、福岡で唯一海外買い付けを行っていたレコード店であるTicro Marketで働き出す。山積みの中古レコードを磨く日々を送る。この頃、店に入荷していたJuzu a.k.a. Moochy(J.A.K.A.M.)のカセットテープを聴き、その存在を知る。 2001年に上京。Yama a.k.a. Sahibを介して知り合ったトランペッター近藤等則のスタジオを頻繁に訪れるようになる。また、Yama a.k.a. Sahibuが率いるアーティスト集団Audio Sutraに参加し、DJ Shabazoneとして活動。尺八をはじめとする民族楽器が用いられた音楽を主にプレイするようになり、徐々にビートがなくなっていく。 20004年、尺八の音が脳裏から離れず、突然DJ活動に終止符を打ち、近所のリサイクルショップで尺八を入手する。虚無僧の半僧半俗の生き方に強く共感し、ライフワークとして尺八の演奏をはじめる。目白にある尺八道具専門店『目白』の店主に虚無僧尺八の先生、善養寺惠介を紹介され入門。師匠のレッスンを受ける傍ら、虚無僧所以の寺、法身寺で坐禅を組む日々を送る。 2008年、すでに脱退していたAudio Sutraからの依頼で、ダブステップと尺八を融合した楽曲『Assassin』を制作。Rudimentsレーベルから『Audio Sutra Sound - Assasin / I'm a Fool to Want You』が12インチ・シングルでリリースされる。2011年、三軒茶屋Orbitでのイベントに出演していたJ.A.K.A.M.に楽曲のデモ・テープを手渡したことをきっかけに、J.A.K.A.M.のレーベルCROSSPOINTのサブ・レーベルproceptionから初のアルバム『SILENCE MIND』をリリース、その後、J.A.K.A.M.主宰のイベントに度々出演する。 この頃、狛江にある泉州尺八工房で働きはじめ、尺八製作を開始する。2018年、理想の尺八を制作するために独立し、川崎の一室にて研究の末、<池上銘地無し尺八>を立ち上げる。制作した尺八が欧米の奏者から高い評価を受ける。 2019年、MACKA-CHIN、MaL、J.A.K.A.M.によるプロジェクト、ZEN RYDAZのアルバム『ZEN TRAX』のレコーディングに参加する。メンバーとしてライブも行い、2021年にはZEN RYDAZのセカンド・アルバム『ZEN TRAX 2』にも参加。2021年に東京おおばキャンプ場で開催された『Oneness Gathering 2021』に出演。ZEN RYDAZの一員として、また、ムックリ奏者のUtaeとのデュオでライブを披露する。 MACKA-CHINの紹介により、TBSラジオの番組<アフター5ジャンクション>に『池上銘地無し尺八』として出演。その後も、Marcus Henriksson、Kuniyuki Takahashi、J.A.K.A.M.によるユニットMYSTICSのアルバム『5 ELEMENTS』への参加のほか、古くから交流のあったSandalsの主要メンバーであるIan Simmondsとともに制作した楽曲『Kenji Sun Bluesを』が、Ian Simmondsのアルバム『The Brunswick Variations』に収録されるなど、尺八奏者として活動の幅を広げていく。2022年には、イタリアの実験音楽レーベルUnexplained Sounds Groupにソロ作品「Access」を提供し、コンピレーション・アルバム『Anthology Of Experimental Music From Japan 2022』に収録される。 2022年、尺八製作と演奏の真髄をより深めるために、尺八の材料である真竹が世界一多い九州、熊本に本拠地を移す。2023年、M​-​Scapeの楽曲「Foggy Forest(JUZU a​.​k​.​a. MOOCHY RMX)」にフューチャリング参加。また、熊本でのJ.A.K.A.M.とのライブ出演の際にTAOと出会う。トランスと尺八を融合させたライブやレコーディングを行い、TAOの作品『Space Era』に楽曲「Takenone」が収録される。

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