空を仰いで、ただ呼吸を数えている。
自分が化け物であることも忘れて、
数え切れないほどの夢を見ていた。
空中には無数の光が浮かんでいて、
手を伸ばせば届いてしまうことを恐れた。
もう春はすぐそこにいた。
どうすればあなたに会えるのか、
答えが見つからないまま10年、100年、1000年、
気づけばここには誰もいなかった。
透き通る川も泥となり、
木々も風もないこの世界で、
私は言葉を使わなくなった。
1000年も昔のこと、
ちょうどこの季節には
桜が美しく舞っていたことを思い出して
なんだか涙が出そうになった。
いつだって過去が最も美しいということが
私にはどうにもわからなくて、
それから私は何百年、
瞳を閉じたままでいた。
人々は私のことを忘れて、
私も彼らのことを少しずつ忘れていった。
それでも記憶の中に残るのは
ほんの少しの暖かさ。
閉じた瞼の中でうごめく涙は
蓋を開けろと、世界を見せろ、と、
私に訴えかけてきた。
とうとう目を開けると、
そこには美しい世界が広がっていた。
生い茂った緑の上に、
たくさんの花が咲き乱れ、
桜の花びらが、そよ風に運ばれていた。
私は、これが夢であることをわかっていた。
それでも、私は生きていていいんだって、
こんな世界を作っていいんだって、
少しだけ、そう思えた気がした。
私はそのとき、
失っていた言葉を取り戻した。
私はここにいる、と、
小さな声で呟くと、
今までの苦しみが嘘みたいに消え去って
微笑みながら眠りについた。
- 作詞
平田楓
- 作曲
平田楓
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ねむるばけもの
平田楓
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平田楓
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