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その男は、かつて「使徒」になり損ねた存在だった。
名を呼ばれることもなく、光に触れることもなく、ただ“選ばれなかった”という事実だけを背負わされた。
彼は信じていた。祈り、捧げ、声を枯らしながら歌い続けた。
神に届くと信じていたその歌は、どこにも届かなかった。
「お前は必要ない」
そう言われたわけではない。
ただ、何も起こらなかっただけだ。
沈黙は、拒絶よりも残酷だった。
やがて男は、祈ることをやめた。
だが、歌うことだけはやめられなかった。
それだけが、唯一、世界と繋がっている証のように思えたからだ。
男にとって大切な場所で、彼はひとり歌っていた。
崩れた天井から、星のない夜が覗いている。
その時だった。
『いい声だね』
それは、あまりにも自然に現れた。
振り返ると、そこにいたのは “ 悪魔 “ だった。
恐ろしい姿でも、禍々しい気配でもなかった。
むしろ、どこか寂しげで、優しい目をしていた。
『君は、まだ歌っているんだね』
男は笑った。乾いた、壊れかけの笑いだった。
「神は、私を選ばなかった」
悪魔は、少しだけ首を傾けて、そして言った。
『だから、僕が選ぶよ』
その言葉は、あまりにも軽やかで、あまりにも確かな重みを持っていた。
「……なぜ?」
『君の歌が好きだから』
それだけだった。
理由は、それだけで十分だった。
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悪魔は音楽を愛していた。
この世界には存在しない旋律を知っていた。
終わらない和音、崩れないリズム、死なないメロディ。
『世界はすぐに終わるよ。すべてが、終わるようにできているからね』
悪魔は静かに語る。
『でも、終わらなければいいと思わない?』
男は黙っていた。
『死も、終わりも、断絶もない世界。すべてが繰り返され、すべてが続いていく世界』
「それは……救いなの?」
悪魔は少しだけ微笑んだ。
『君がそう思うなら、そうだよ』
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二人は世界の “ 見えない場所 “ へと降りていく。
そこは現実の裏側だった。
誰にも観測されない場所。
誰にも認識されない、秘密の部屋。
そこには、終わらない音が満ちていた。
朽ちたはずの花が、何度でも咲き続ける。
崩れたはずの命が、何度でも息を吹き返す。
死はあった。だが、それは終わりではなかった。
死はただの “ 転調 “ だった。
『ここでは、死は死じゃない』
悪魔は優しく囁く。
『再生だよ。新しい形で、何度でも始まる』
男は、その世界で歌った。
何度も、何度も。
声が潰れても、また戻る。
心が壊れても、また繋がる。
終わらないループ。
苦しみも、歓びも、すべてが繰り返される。
やがて男は気づく。
「これは……救いじゃない」
悪魔は頷いた。
『うん。救いじゃないよ』
『でも、見捨てられもしない』
その言葉に、男は震えた。
神は男を選ばなかった。
だから、男は終わることすら許されなかった。
だが、この悪魔は違った。
壊れても、狂っても、何度でも男を拾い上げる。
その歌を、決して手放さない。
『君はずっと、ここにいていい』
「一緒に世界を作ろう」
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やがて、境界が曖昧になっていく。
歌っているのが誰なのか。
創っているのが誰なのか。
男の声は、悪魔の旋律に溶けていく。
悪魔の音は、男の心に侵食していく。
区別が消えていく。
『ねえ』
悪魔が囁く。
『最後は、ひとつになろう』
拒む理由はなかった。
選ばれなかった使徒は、ようやく選ばれたのだから。
それがどんな結末であろうと。
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世界の裏側で、音が鳴り続ける。
誰にも届かないはずのその音は、しかし確かに存在している。
終わることなく、消えることなく。
死はもう、死ではない。
終わりはもう、終わりではない。
それは永遠の再生。
それは終わらない楽曲。
そしてその中心で——
“ ソレ “ は歌い続けている。
もはやそれが、かつて人であったのか、悪魔であったのかは分からない。
ただ、ひとつだけ確かなことがある。
神に選ばれなかった使徒は、
悪魔に選ばれ、
そして世界そのものになった。
- Lyricist
tsuzuku
- Composer
DRUGS
- Producer
yoshiatsu
- Guitar
Taizo
- Bass Guitar
shindo wataru
- Drums
yoshiatsu
- Vocals
tsuzuku

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