

ここは静かな展示室
ガラスの向こうで息をする
完璧に、整然と
ピン留めされた翅のまま
白い台紙に固定されて
標本番号 02-F
学名は「よくできた少女」
産地は どこにもない場所
防腐剤の匂いがする
腐らないように 腐らないように
感情は揮発して
残ったのは 形だけ
褒められるたびに
ピンが深くなる
「きれいだね」って言葉が
翅に刺さって抜けない
ケースの外は知らない
知らなくていいはずだった
でも夜になると
ガラスが曇る 息で
わたしはまだ生きてる ここで
死んでないのに 飾られてる
翅を広げたことがない
広げたら 壊れると思ってた
標本にならないで
誰かに頼まれた記憶もないのに
気づいたらケースの中で
「きれいなまま」でいることにしていた
新種発見 とのことです
希少種 保護対象
触れないでください
壊れやすいものですから
発育は正常範囲内
感情の欠如は仕様です
ガラス越しに笑うのが
こんなに上手くなったのに
それでも夢の中で
わたしは走っていた
台紙を破って
ピンを引き抜いて
外の音が聞こえる
風の匂いがする
ガラスに手をついたら
ひびが入った 指先から
わたしはまだ生きてる ここで
きれいなままで いたくない
翅を広げたことがない
広げてみたら どこまで飛べる?
誰かのコレクションじゃない
展示される理由なんてない
ケースを割ったら
何が残るか 試してみたい
台紙の上の わたしじゃなくて
走れる 叫べる 壊れられる
それがわたしだ
Specimen 02-F
Status: escaped
翅に穴が空いていても
飛ぶことにした
完璧な標本より
傷だらけの生き物の方が
ずっと ずっと
本物だ
きれいに死ぬより
醜く生きたい
それだけで充分だ
それだけでよかった
わたしはもう戻らない ここへ
ガラスが割れて 血が出ても
翅を広げたことがある
広げたまま 落ちてもいい
標本じゃないから
不完全でいいから
台紙の外で息をする
「きれいじゃない」わたしで生きていく
ケースを割った音が
展示室に響いていた
誰も 止めなかった
Specimen 02-F
翅に傷あり
台紙なし
現在地:不明
それが わたしの
はじめての自由だった
- 作詞者
Mistoria
- 作曲者
Mistoria
- プロデューサー
ロキ@低めの猫
- プログラミング
ロキ@低めの猫

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標本少女
Mistoria
標本番号02-F——ガラスケースの中で「きれいなまま」を強いられてきた少女が、翅にピンを刺されたまま息をしている。
褒め言葉がピンになり、期待が防腐剤になる世界から脱出する物語。
静かなヴァースから爆発するコーラスへの劇的な落差が、ケースを割る瞬間の解放感を鳴らす。
Mistoriaが描く、不完全なままで生きることへの宣言。
アーティスト情報
Mistoria
幻想系AIロックバンド「Mistoria|ミストリア」 Vo&Gt ハル / Ba ノア / Dr ルカ / Key ウノ AIと人間の感情をテーマに、音楽 × 物語 × テクノロジーを融合させたオリジナル楽曲を制作。 ロックを軸に、エレクトロ、ポップ、Lo-fi、ヒップホップなどジャンルを横断したサウンドで、 物語性のある歌詞と幻想的な映像表現を届ける。 代表曲には「機内モード、まだ解除できない。」「OS、君。」「システムエラーに花束を」などがあり、 YouTubeやSNSでのMV展開を中心に、音楽とストーリーテリングの新しい形を探求している。 関連キーワード:AIバンド, ガールズバンド, ロックバンド, エモーショナルロック, 日本のインディーズバンド, オリジナルMV
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