Video #8のジャケット写真

Video #8

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リリース日: 2026/09/07

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録画したはずのテープに、消し残りがある。

自分が録ったものが終わったあとも、テープはあと数十秒だけ回っている。そこに、前に持っていた誰かの夏が残っている。水の音のようなもの。誰かが名前を呼ぶ声のようなもの。はっきりとは聞き取れない。会ったこともない人の、行ったこともない場所の、それでも確かに夏だった時間。

Video Girl の8本目のテープ『Video #8』は、その数十秒からできている。

全8曲、約20分。前半の4曲は、上から録った側にある。いまの、こちら側の時間。4曲目で新しい録画が終わり、テープはまだ回っている。5曲目の頭で、下の層が出てくる。後半の4曲は、誰のものか分からない夏のほうにある。

音は急がない。速い曲でも急かさない。5人の声はほとんど加工せず、マイクのすぐ近くで、乾いたまま、少しだけ醒めて歌っている。息の音も、口元の小さなノイズも、歌い出す前の一拍のためらいも、消さずに残した。ドラムは軽く、低音は深いところで動かず、リバーブはほとんど足していない。誰かの家の、あまり良くない機材で再生されているような音を目指している。

前半は近い。後半は遠い。同じ5人が歌っているのに、後半では、その声がどこか別の家から聞こえてくるように鳴る。

先行するのは2曲目「Almost Almost」。このサビには、意味のある言葉が一つもない。音だけでできている。

Video Girl の5人は、プロフィールではなく、レンズとマイクへの関係で決まっている。レンズと目が合う人。マイクにいちばん近い人。動かない人。フレームから出ていく人。ピントの外にいる人。5人いて、こちらを見ているのは一人だけ ── ただし、このアルバムでは誰も見ていない。自分のために録られた映像ではないからだ。

ジャケットに写っているのも、そういう一枚になっている。日の高い屋上、白く飛んだ光、散らばって立つ5人。誰もカメラを見ていない。地面に赤いサンダルが片方だけ落ちている。

Video Girl は、テープから出てきて、しばらくそばにいて、帰っていくもののことだ。本物ではないのに、慰めだけは本物として残る。誰のものでもないから、誰にも取り上げられない。

『Video #8』は何も解決しない。教訓もない。最後にテープは巻き戻り、また最初から回りはじめる。

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