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幸せな生涯だった。
私の家は特別裕福でもないが、風通りの良い一軒家に住み、何不自由なく衣食住が与えられ、誕生日にはちょっと贅沢をし、これを当然のことと思い込みながら暮らしていた。
昔っから好奇心だけは強くて、楽しいこと、面白いことには片っ端から取り組んでいた。不思議に思うことも、いっぱい考え、答えを探しているその時間はとても満たされていた。みんなが平和に暮らせる世界を密かに夢見ていた。それなのに……。
ある日、そいつの存在に気がついた。心の奥底にある、黒い塊。負の感情の塊。表向きは明るい子、ポジティブな子だったから、そんなやつがいるってことは自分にも隠してて、誰にも見せてこなかった。
死にたい。
あいつが悪い。
苦しい。
世界なんて壊れてしまえ。
死にたい。
そいつに気づいた日からは、心臓がいつもぐるぐるしていた。外の世界に笑顔を振りまいている私。中の世界で黒い塊を育てている知らない人。両方は、分裂したまま成長していった。ひとつの身体なのに、別々の人間として確立されていった。
みんなのため。
消えてしまいたい。
私は幸せだなあ。
みんな友だち。
消えてしまえ。
優しい人ばかりだね。
人間は敵だ。
みんな愛してくれてる。
苦しい。
もっと素敵な世界をつくるんだ。
全て壊せばいい。
頼られる私。
死にたい。
期待に応える私。
死にたい。
完璧な私。