歌詞

きみが置いた音叉がふたつ

片方は少し欠けていた  

窓の外、雨の拍がズレてく

世界から置いて行かれた午後  

「完璧な静寂は、息が詰まる」と

きみは わざと音飛びする音盤に

そっと震える針を落とした  

その傷だらけの旋律に  

僕の心の皹がぴたりと重なった  

ああ、これだったんだ

僕らが探していた言葉は

きみの瑕にだけ

僕の歌は届くんだ  

正しい音階じゃ

その涙に触れられない  

ずれて、軋んで

生まれるこの響きこそ  

僕らがふたりきりの世界で交わす  

初めての挨拶だった  

僕がどもらせた「さよなら」の言葉を  

きみはずれた木霊みたいに

何度も共振させた  

「その震え方が、一番あなたらしいね」

なんて  

僕の弱さを世界で一番美しい

宝玉みたいに  

その手のひらの上で

そっと、転がしていた  

完璧な笑顔を交わすより  

不器用な沈黙を

分け合いたかった  

そう僕らは初めから

同じように罅割れていた

僕の罅だけきみの扉を叩けるんだ  

綺麗な言葉じゃ

その孤独を抱きしめられない  

欠けて、歪んで

生まれるこの和声こそ  

僕らが迷子のままの世界で交わす  

永遠の約束だった  

僕らはみんな

不揃いの音叉だ  

正しい周波数じゃ

決して出会えなかった  

僕の震えが

きみの欠けた部分でだけ

共鳴する  

きみの軋みが

僕の空白でだけ

意味になる  

世界が僕らを間違いと呼ぶなら  

ああ、僕らのズレで

世界の中心を

調律しよう  

きみの瑕でしか

僕は息もできないんだ  

正しい世界じゃ

僕はとっくに死んでいた  

だからこの瑕だらけの音を聴いて  

僕らがふたりきりの世界で鳴らす  

たったひとつの心音の聞かせ方  

ねぇ耳を澄まして

…きこえる？ 

これが

わたしたちの

音