

何も変わらない顔で
今日もドアを閉めた
机の端に置いたままの鍵が
知らない部屋の音みたいに鳴った
読みかけの文庫に挟んだ古い領収書を
捨てずにいる理由だけが増えていく
午後のスーパーで同じ棚の前に立って
買うつもりのない缶詰を手に取った
隣のレジで誰かが笑っただけで
平気だったはずの胸が少し遅れた
終わったことにすれば
楽になれる気がした
だけど空いた椅子の形を
まだ体が覚えている
忘れたふりをして
昨日と同じ速度で暮らしている
カレンダーの端に残った丸印を
見ないようにめくりながら
もう戻れないとわかっていても
なくしたものを悪者にはできなくて
誰にも気づかれないくらいの痛みを
ポケットの奥で折りたたんでいる
夜の歩道橋から見下ろした車の列が
黙ったまま遠くへ流れていった
渡らなかった信号の青だけが
少し長く胸に残っていた
古い上着の内ポケットから
二人で入った映画の半券が出てきた
ストーリーはもう曖昧なのに
暗くなる前の会話だけ妙にはっきりしている
平気になることと
忘れることは違って
何も言わない日々のほうが
ずっと正直だった
忘れたふりをして
誰かに聞かれたら笑って答えている
窓のないエレベーターで息をひそめて
少しだけ昔の匂いを逃がす
もう戻れないとわかっていても
大切だったことまで消したくなくて
言葉にすれば崩れてしまいそうなものを
胸の奥で静かに持っている
何も変わらない顔で
今日もドアを開ける
忘れたふりで、生きている
まだ少しだけ やさしくなれずに
- 作詞者
GREYLINE
- 作曲者
GREYLINE
- プロデューサー
GREYLINE
- ボーカル
GREYLINE

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忘れたふりで、生きている
GREYLINE
アーティスト情報
GREYLINE
GRΛYLINEは、3人組の男性バンド。 顔や個人像を前面に出さず、音楽と“状態”だけを提示するプロジェクトとして活動している。 作品ごとに声の距離や温度が変わるのが特徴で、 それはキャラクターの変化ではなく、 感情やフェーズによって声の位置が変わるという考え方に基づいている。 内省的な夜を描いた『言えなかったままで』、 日常を肯定する『Clear Days』、 そして身体が先に動く『MOVE FIRST』。 GRΛYLINEは、 考え、立ち止まり、動き出す?? そのすべてを同じ時間軸の中で鳴らし続けている。 姿はシルエットのまま、 音だけが前に進む。
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