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Lyric

204

WAKABA

「今日カレー作るけど来る人いる?」

その一言でみんなが集まり

狭い部屋の中で談笑

側から見ればなんでも無い光景だろうが

そこにあるのは確かな安らぎだった

玄関先乱雑に置かれた靴を見ては

幸せの語源が何たるかを知る事が出来た

変わりゆく風景に変わらない思い出

始まりの場所は狭い1室

19の頃初めて行ったその場所は駅の近くで

線路沿い物音が少しだけ多いアパート

Pinoに会わせたい人達がいるから

と言われて入った

チャンダンとヤニの匂いが焦げ付いた玄関

後の親友との出会いは意外とあっさり

「あー、影賭って言うんだpinoからいつもいつも聞いてるよ」

その後何回か内容の無い会話を交わして

「サイファーでもしようぜ」

キッチンでbring the beat

それからと言うもの毎日の様に

通うようになった

通称“204”まぁそこは人の家なんだけれど

家主は学校の先生をしているのに

誰が何時に来たって

嫌な顔1つせずに朝まで語り合う

「名は体を表す」204と言われて

俺は狭い部屋で雑魚寝してる大人達が浮かんだ

外人、ニート、ジャンキーに凡人

皆がフラットな精神と時の部屋

どのイベントに出てもレペゼン204と叫んだ

レペゼンと言える場所が出来た事が嬉しかった

あの場所から何曲もの名曲が生まれて

プレゼントと言えば楽曲は暗黙の領解

人にとっての不必要も本人達には大事で

それは小学生が石を持ち帰るあれに似ている

変わりゆく風景に変わらない思い出

始まりの場所は狭い1室

なぁ、覚えてる?俺のソロ1stEP

確かマーガリン君と飲んだ後に録ったskit

その時はめちゃくちゃ上手くいったって

盛り上がったんだけれど次の日に聞いてみたら

グダグダでボツにした

Bobaのもうちょっと寝かせては

1日の事を言うから

次の日が仕事なのにずっと寝ていた事もある

タックは入り浸るし

カラムなんて住んでたんだぜ

橋本じゃ一人ぼっちになる方が難しい

ある日の事家主の先生がゴミを捨てに行ったら

ちょうど大家さんと出会して

その大家さん

先生の持っているゴミ袋見るなりいきなり

「だめだよ〜、そんな1人でお酒飲んだら」

1人用の部屋にたまる空き缶と空箱

飲みかけの缶ジュース転げ落ちるライター

そのどれもが過ぎる日々の象徴に感じて

“暖かさ”を目で捉えた初の経験

思い出とシミはよく似てる拭おうとしたって

色褪せる事はあれど形自体は変わらない

もしも過去の上書きが未来だとするならば

俺の未来は断層がとても鮮やか

「START」「勇者、凡人、怠惰」

「愛の降る日」「若葉」

どれも204が無けりゃ完成しなかった

変わりゆく風景に変わらない思い出

始まりの場所は狭い1室

時計の針は当たり前の様に進んでいて

気付かないだけで

実は人もそれと同様に動いてる

家主の先生が彼女と同居する事になって

“一応は”204からの退去が決まった

大まかな荷物運び出して最後みんなで

何も無くなった204で

お別れ会をする事になった

あんだけ荷物があった部屋が空っぽになっても

広いと感じない訳を皆んな同時に察知

お別れ会翌日テレビ台やらなんやらを

俺の車に乗せて先生と2人で捨てに行った

鍵の受け渡しは14時だから

その前に帰ってきて近所のうどん屋さんで

食べる引越うどん

最後の時間先生だけが1人部屋に残って

2度と来ない場所から帰る道で気付いたんだ

記憶ってのは何気ない所に残ってる

思い出が産みだした破片だと

俺は帰り道にあの線路沿いを通る度に

しばらくはその破片をまた

拾う事になりそうです

お別れってなんか

マイナスなイメージが強いけど

こんなに清々しいお別れも存在する

不動産の人は多分知らないから

どうしようも無いけど

次の入居者の人には伝えるべきだと思う

リフォームしても消えないほどの

シミが残っているから

204はめちゃくちゃ事故物件

  • Lyricist

    EITO

  • Composer

    HIRATE MARINO

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