

朝、職員室へ 小声ながら、しっかり挨拶をして入る
だが、返ってきたのは冷たい空気だ
昨日の私の狼狽ぶりは
伝言ゲームで書き換えられて広まっているのだろう
自分がどう思われていようと、気にはしない
職責を全うするのは当然だ
しかし、彼を救う手段も考えねばならなかった
まず、教員の中から少しでも問題意識を持つ者を探した
理科の教師が一人、彼と街で偶然会い
公園で話したことがあるという
家庭に問題はなく、いじめもない
結局は本人の性格の問題だと結論づけ
学校としては静観すると決めたそうだ
しかし、学年主任の放った
「厄介事は持ち込まないでくれ」
という強い言葉に、妙な違和感が残る
答えが出ぬまま数日が過ぎ
彼のクラスの授業が巡ってきた
私は数学の教師だ、いつも通り淡々と進めるが
意識は自然と彼に向く
その瞬間、彼と目が合った
見逃さなかった、光を失ったはずの目の奥に
確かに助けを求める光があった
私は下校時間に彼を呼び止め
ただ一言「君は何を怖がっているの」と問いかけた
彼はみるみる恐怖におびえる目になり
私の前から走り去った
だが、確かに私に救いを求める手を差し出し
つかんでくれた感覚が心に残った
彼は助けを求めている、間違いはない
今日の出来事で、彼との距離は必ず近づいたはずだ
一歩でいい、前へ進んでいる
その時、「先生」と声をかけられた
振り返ると、隣のクラスの女子生徒が立っていた
「ちょっといいですか、今走り去った男子のことで
お話があるんですけど」私は保健室の鍵を借り
静まり返った部屋で彼女と向き合った
そこで語られたのは、驚愕の真実だった
女子生徒は答えた
「彼は無視されているんです。クラス全員に
学校の全員、先生たち全員にも」
私は驚きを隠せなかった
これはクラス全員、いや教員を含めた全員から
存在を無視されているという
陰湿で静かな加害ではないか
女子生徒は続けた、去年、ネット上である
全く関係のないゴシップ記事の元が彼ではないか
という噂がみるみる広がり
同調するように無視されていった
・・・
- 作詞者
m.ku
- 作曲者
m.ku
- プロデューサー
m.ku-3
- ギター
m.ku

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方舟の行く先 座礁 第二章 混沌
m.ku
ご好評頂いております。たかはし先生「卒業」の続編です。
田舎の小さな町の中学校が廃校になり、大きな町の中学校に転勤となった女教師「たかはし先生」を待ち受けていたのは、とてつもなく大きな問題でした。たかはし先生はその問題に立ち向かうことになります。
この物語は小説に例えたら一冊分相当です。曲に落とし込むにも「前」「中」「後」と三部作になってしまいました。それぞれに付いた「副題」が曲の中身を表しています。さてどんな物語なのか、お楽しみください。たかはし先生の物語はまだまだ続いてゆくのです。



