

蛾はその習性故に光に惹かれる。
不思議なところにいる
大きく揺れる船の底
さまざまな姿の乗客
見慣れない文字で書かれた切符で
知らない街まで行く。
光を曲げる虫籠、
羽と命がある商品
船に積まれている
檻の中から無数の風が覗く
中にはさまざまな国から
運び込まれた虫の群れ
珍しい蝶 および蛾
熱帯の湿り気を含む意識
街では高く売れるらしい
くすんだ銀の指輪をはめた親父
物好きな金持ちの家の敷地
完璧な庭で飼われるらしい
一番安い切符で行ける港なんて
たかが知れてるよな
そこから先は歩いて目指す
大きな青い壁が聳え立つ街
すり抜ける手段
考えておかないと
そのうち野垂れ死に
暗くて寒いとこから来たがさて
おれを歓迎してくれるか未来都市
おれを歓迎してくれるか未来都市
船は夜の道を行く
「ダイチワゴーは頭おかしい
目には見えないものが見えている」
壊れた鏡に映ってる分割された月
静かに凪いでる真っ暗闇の中にはない帰り道
三等客室
一番硬ってえベッドに揺られて書いてる詩
一言一句一行一連一遍
近づく新天地
透明な満ち引きの時間を魚が通り過ぎる
失われた濡羽色の髪を梳かす海の櫛
微睡の波の中に見えてくる古い灯火
透き通った身体
あかりの持ち主はここにはいない
かつてこの海の道を運ばれた人
腕には烙印
枷をはめられてる手と足
汚される予定の初雪
わたしはどこにもいけない
わたしはどこにもいけない
錆びたマスト 塗りの禿げた銀、
臭いディーゼルエンジン
ボロい船 昨夜、嵐
揺れのせいで悪い夢見、
顔を持たぬ叫び
脳に直撃するイメージ
俺は目を塞げない
全部ここに刺さり痛い
まもなく着く悪意の街は暗い輝きを纏い
メウェ市の大水門は言うなればその入り口
おれは酩酊拒否、第六感剥き出し
みんながまだ眠っている船の底から
盗み出した虫籠 壊す脆い錠
狭い箱を開けると
一斉に飛び立っていく羽の群れ
さあ行け
好きなところへ
煤で汚れた羽を広げるきみは自由だ
ここメウェ市の大水門は大きな口を開けて
俺を己の一要素として飲み込み
消化することを望む
腹の内側から食い破れるか
養分になるか
道半ばでくたばるかは全部俺次第だ
嫌いなものは嫌いだし
どうせお前とはわかりあえないがしかし
少しの間だけ
俺と脳味噌を交換しないか
蛾は街へと紛れて行く、
脆い頭蓋骨を、
それぞれ気に入った街灯に
頭をぶつけて死ぬんだろう。
- 作詞者
Daichi Wago
- 作曲者
junchai
- プロデューサー
junchai
- マスタリングエンジニア
junchai
- ラップ
Daichi Wago

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ストリーミング / ダウンロード
- 1
半眼ノ解説
Daichi Wago
- ⚫︎
メウェ市水門
Daichi Wago
E - 3
魔都公共放送
Daichi Wago
- 4
大聖堂地下三十三階
Daichi Wago
- 5
GESTALTZERFALL.
Daichi Wago
- 6
光ガ丘
Daichi Wago
アーティスト情報
Daichi Wago
アングラ演劇にルーツを持ち、各地を放浪しながら躁鬱的なスポークンワードを展開する閉所恐怖症の吟遊詩人。香港、ベルリンへのインスピレーショントリップを経て制作された2nd EP「此処何処?」のリリースに伴い、全16都市、28カ所ををめぐるツアー「架空都市の暴走」を2024年に実施。音楽と芸術の実験集会「魔界難入」を主催する。
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