

卒園式の数日前
まもなく一年が経とうとしている
最初に私が抱っこしたときに
大泣きした子も二歳になり
今では私の顔を見るなり
大きな声で笑いながら 抱きついてくる
去っていく父親にも
「バイバイ」とかわいらしく手を振っている
とたんに私から降りたい意思を示し
床に立たせると
つたなくも自分の足で歩いていく
突然ばたんと前向きに倒れた
でも 本人は全く平気で
すぐに立ち上がり また前に進んでゆく
もし 私だったらどうなっていただろう
次の日には包帯や湿布の
お世話になっているに違いない
桜が満開だ
今日は おそとで みんなでおやつを食べる
父親の体は不自由さが残ったが
命に別状はない しかし 通院の助けは必要だ
やはり私は 卒園式の次の日に
ここを去ることになる
実家のそばの中学校の分校に
勤めることが決まった 今のところは
事務的なことに関しては すべてが順調だ
しかし 年度の途中で辞めてしまい
みなさんにご迷惑をかけてしまうことを
本当に申し訳なく思っている
みんなと会えなくなる時間が
秒単位で迫ってくるのが とても寂しい
子どもたちは 本当にこの一年で成長した
みんな元気だ
卒園式の日が来てしまった
みんなの胸にバラのシールを
貼りつけるのが私の役目だ
一人ひとりの出来事を鮮明に思い出せる
まぶたが あと 0.1ミリ低かったら
間違いなく涙が決壊していただろう
でも ダメだ 彼らの人生の最初の旅立ちは
「笑顔」で送らなければならない
つつがなく式典は終わった
折り紙で作ったアーチをくぐり
卒園生を送り出す
笑顔でみんなが手を振って去っていく
でも 門からは出ていかない なぜだろう
突然 いじめっ子だったあの子の掛け声で
みんなの声がそろった
「た か は し 先 生 あ り が と う」
私は突然の出来事に
何が起こったのか理解できなかったが
それが私だけに贈られた
特別な言葉だということがすぐにわかった
私は走り みんなのところへ向かった
そして 両手いっぱいに彼らを抱きしめていた
一年前の大泣きは悔しさの涙
今回の大粒の涙は、どこまでも温かく
嬉しく でも寂しい涙だ
みんなありがとう いつまでも忘れないよ
この日で 私の保育士としての時間は止まった
かけがえのないものをもらい
四月からは中学校の教員として
新たなスタートを切ることになる
みんな 本当にありがとう
- 作詞者
m.ku
- 作曲者
m.ku
- プロデューサー
m.ku-3
- ギター
m.ku

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前日譚 その7 保育士たかはし卒園、そして中学校教師へ
m.ku
当方作品ヒロイン中学校教員「たかはし先生」の前日譚その7最終回です
保育士になり小さな子供の成長を見守る喜びを見出した、保育士たかはしですが、親の看病で実家にもどることになりました。そこで中学校の教師として新しい道を歩き出します、→箱舟の行く先へつながります
7部作の7です。彼女の前日譚第7章最終章です。



