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数年の時が流れても、同じ画面の上を同じように滑り続ける親指。「ロード時間が速くなっただけで、私たちはどこにも移動していないのではないか」というデジタル・ループの虚無と解離感を、クラウト・ロック特有の冷徹な前進力(モートリック・ビート)に落とし込んだ、BPM84(Dマイナー)の極めて硬質で内省的なミニマリスト・リズム・モートリック・ポップです。楽曲を支配するのは、微塵の狂いもなくグリッドに固定されたキックと、それに対してほんのわずかに「早く着地する」ことで、焦燥的な推進力を生み出すアコースティック・スネア。そして、人間らしい微細な呼吸をエミュレートするように7ms(ミリ秒)単位の音量(ベロシティ)変化を繰り返すハイハットが、終わりのないタイムラインの回転を体現しています。
楽器構成は、コード(和音)を完全に排除し、すべて単音だけで冷たく反復される2音のエレキギター・リフと、16小節ごとに「わずか半音だけ変異(ミューテーション)」して微小な内部摩擦を生み出す1音のベース・オステナートのみ。過去を美化するようなノスタルジックな残響(リバーブ)やドリーム・ポップ的な甘い霧を徹底的に拒絶し、左右40%のステレオ幅に静かに配置された無機質なテクスチャ・パッドが、視線のサスペンスを維持します。ボーカルはマイクから24インチ(約60cm)の距離で捉えられた、ビブラートを完璧に排した男性のフラットなバリトン・リード。各セクションで一度だけ、意図せず混入する「ヴォーカル・フライ(声帯の擦れ)」が、完全にシステム化された電脳世界に残された生々しい人間の肉体を証明しています。楽曲は全く同じ4小節のループが構造的に7回繰り返されるという「閉じ込められたアーキテクチャ(構造的トラップ)」を徹底。最後は究極の引き算を経て、声とベースの残響が消え去り、最後のキックがグリッドを叩いた瞬間、テープヒスの環境音ごとマイナス1.5 LUFSのミッドサイド・リミッターによってスパッと完全な真空の静寂へと遮断される、息をのむほどに冷徹で美しい傑作トラックです。
Negi0723は、感情の揺らぎと都市の空気感を繊細にすくい取るミュージシャン。 エレクトロニックとポップ、オルタナティブの要素を横断しながら、 きらめきとノスタルジー、衝動と内省が共存するサウンドを描き出す。 印象的なメロディと映像的なリリックが特徴で、 一瞬の感情や夜の断片を切り取るような楽曲世界は、 リスナーそれぞれの記憶や物語と静かに共鳴していく。 ジャンルに縛られず、感覚を信じて音を紡ぐ。 Negi0723の音楽は、日常と非日常の境界線をやさしく溶かしていく。