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2023年、心が晴れない日々が続き、脳裏にこびりついた大きな憑き物。心に穴が開いたようで、膨大な時間が突然できた。そんな中、懐かしい友人と会ったり、食事に出かけたりした。大人になって、新しい友人もできた。無駄な時間を使い、心の隙間を適当に埋めていた。
時が経つにつれ、感情は飽和し、溶けていくような感覚を覚えた。一方で、新たに浮かび上がる感情もあった。相反する気持ちが交錯していた。気がつけば、いつの間にか年を越していた。
2024年、私はライブに何度も足を運んだ。Daniel Caesar、King Gnu、Steve Lacy、FKJ、宇多田ヒカル。それぞれの楽曲、演出、人柄…。本来なら生み出す必要のない芸術の素晴らしさを目の当たりにした。ゼロから生み出されたもので、人々は踊り、声を上げていた。私はただの消費者でありたくない。生産者でありたいと強く感じた。
その思いがきっかけで、アルバム制作を決心した。まずテーマを決めるため、パルコ近くの古本店に足を運んだ。店内で特に気に入ったものはなかったが、そこで「Delta」という単語に目が留まった。数学の書籍と、広島の三角州について書かれた本の中にその言葉があった。
帰宅後、自宅のPCで「Delta」について検索した。すると、数学的な意味では「状態の差分を表す」という説明があった。その瞬間、渦巻く相反する感情に「Delta」という言葉がぴったりだと感じた。
もし今が「Delta」なら、この浮き沈みの差は大きくも小さくもなるだろう。NISAのように、長期的には上昇するのかもしれない(?)。それぞれが人生という「Graph」を描いている途中なのだ。眩い日々の中で作り上げたものを大切にしたい。できるなら、全員に「瞬間瞬間が必須だ」と伝えたい。アルバムのテーマは、ようやく定まった。
ある日、メンバー全員が喫茶店に集まり、アルバムについて話していた。その時、Martyが持っていたスケッチブックにラフに描かれたゴリラの絵が目に留まった。通常、ゴリラの体毛は黒いが、Martyが描いたゴリラは青かった。その青いゴリラは、妙に勇敢に見えた。人間の苦労や悲しみを、ゴリラは感じるのだろうか…。
それが「Graph」のテーマとも重なり、さらに深く考えさせられた。その後、ゴリラについて調べてみた。ゴリラはストレスに弱く、繊細な性格だが、動物の中でも非常に高い知能を持っているという。人間と同じような感情を、ゴリラも抱えていることを知った。
ようやく心が整理され、発表する準備が整った。
「人生とはグラフのように、常に変化し続ける線。 ひとつの座標にしか立てない私たちは、“その時その場所”でしか生まれない音を信じている。 Graphéという名前には、そんな想いが込められている。」 そう語るのは、Graphéの中心人物であり、音楽家・プロデューサー・ビートメーカーのSang。 広島と東京を拠点に、ラッパーのMarty(広島)、プロデューサーのCline(東京)とともに活動する音楽プロジェクト。 オルタナティブ、ヒップホップ、R&Bをベースに、“ジャンルにとらわれない”自由な発想で、心地よさと異世界感が共存するサウンドを描く。 平和でグリーンなムードを大切に、都市と自然、混沌と静寂のあいだを行き来する。 宇多田ヒカル、Oasis、Travis Scott、Stevie Wonder、山下達郎など、ジャンルも時代も越えた音楽から影響を受けつつ、今この瞬間にしか鳴らせない音を探し続けている。
SUNHIM