

灰色の曇天の五月
常磐線を北に向かう
志賀直哉の「和解」を読み
ボロボロ泣いた
牛久の手前だった
曇ったガラスを手で拭いて
外を覗くと目に入ったのは
ドレミ駐輪場の文字
乗換の土浦駅
ボタン式ドア開閉で
奥羽本線を思い出す
佐竹一族の墓の間に
緑葉樹が水滴を垂らす
水を吸った卒塔婆の上に
一匹の野鳥が止まる
排水溝の上で
二匹の蚊が睦み合っている
階段の先に茶色い蛙の石像
濁った池に甍が揺れている
参道の木々の望遠鏡を覗けば
茶色くなった蛙の石像
神寂びた柏慎(はくしん)が呼吸する
先祖へ会いに常陸へゆく
先祖へ会いに常陸へゆく
墓も分からない
何処に住んでいたかも分からない
名前も知らない
でも確かに先祖に会えた
僕は会えたのだ
佐竹寺の千社札の曼荼羅に
言葉を失って立ち尽くす
茅葺き屋根から落ちた水が
小石を歌わせる
雲の動きがやけに早い
夕陽を浴びた雪村の碑
復元された馬坂城の
小ぢんまりとした門に蝿が止まる
戸愚呂を巻いた細い木が
太い木にねっとりと絡み付く
物見台から見た白い美田
山の上からも聴こえる蛙の合唱
白濁した井戸水に触れる
目を閉じてみれば瞼の裏で
揺れる木の葉で明滅する
太陽光を感じる
先祖へ会いに常陸へゆく
先祖へ会いに常陸へゆく
墓も分からない
何処に住んでいたかも分からない
名前も知らない
でも確かに先祖に会えた
僕は会えたのだ
手に直撃した鳥の糞
それすらも美しく思える
泥濘んだ坂道で転んだが
その痛みすら心地良い
今まで何人を助けて来たか
分からない竹の棒を持ち
僕はどこまでも一人歩いてゆく
雑木林を分き入って
先祖の生活の跡を見つける
使われないまま束ねられた焚き木
何も語らぬ石碑とタンポポの綿毛
ひっくり返った松の木の
根が人面にしか見えない
二股の木に溜まった水
鯨ヶ丘を北へ向かい
雨上がり
底の見えない深緑の山に霧が霞む
先祖へ会いに常陸へゆく
先祖へ会いに常陸へゆく
墓も分からない
何処に住んでいたかも分からない
名前も知らない
でも確かに先祖に会えた
僕は会えたのだ
- 作詞者
鈴木 諭
- 作曲者
鈴木 諭
- マスタリングエンジニア
鈴木 諭
- ギター
鈴木 諭
- ボーカル
鈴木 諭

鈴木 諭 の“先祖へ会いに常陸へゆく (LIVE 2023.06.29 八王子びー玉)”を
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アーティスト情報
鈴木 諭
地獄の詩世界と秋田弁ブルースを唄う、裏日本シンガー。じゅんさい王国(旧・山本町)出身。2023年頭より弾き語りを本格始動し、代表曲に『犬の川』『アトピーのうた』 『亀のいる木橋』などがある。「東北の情念的な系列」と評される文学的かつ厭世的な歌は、各所で高い評価を得ている。またもう一つの持ち味である秋田弁ブルースも「何を言ってるか全く分からないけど面白い」等の声を集め、人気を博している。精神疾患の再発を機に、療養を経て2026年より拠点を秋田に移し活動再開した。
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