

小雨の降り続く
或る秋の土曜日
定食屋で飯を食っていたら
横のテーブルのオヤジが話しかけて来た
金閣寺放火事件を知っているかと
昭和の一大事件を知っているかと
かく言う俺が燃やしたんだと
僕が返事をする前に
矢継ぎ早に言いだして
小僧に美しさについて教えてやろうと
聞いてもいないのに語りだした
本当に美しいモノは見えない
本当に美しいモノは触れられない
本当に美しいモノは知る事も出来ない
なあ、俺の言いたい事が分かるだろ?
その血走ったオヤジの眼が
何とも言えないくらい美しかった
人は何かにすがらないと生きていけない
俺にとってはそれが金閣寺だった
そう言うとお冷の入ったコップを
一気に飲み干した
昔の姿を知っているか?
金の名前に不釣り合いな古びた寺を
それがただ許せなかった
あれは存在してはいけなかった
だから俺は全てを燃やして
本当の美しさを灰の中から
引き摺り出したのさ
本当に美しいモノは死ぬ事を知らない
だから俺は今もこうして
世の中に美しさと言うのを説き続けてる
なあ、俺の言いたい事が分かるだろ?
蛍光灯が照らしたオヤジの額の汗が
何とも言えないくらい美しかった
野暮な話をしちまったなと
オヤジはそう言って立ち上がり
急かされたように店から出て行った
後を追って僕も外に出たら
秋雨が強さを増して視界を曇らし
もう人影はひとつも見えなくなっていた
- 作詞者
鈴木 諭
- 作曲者
鈴木 諭
- マスタリングエンジニア
鈴木 諭
- ギター
鈴木 諭
- ボーカル
鈴木 諭

鈴木 諭 の“金閣寺余話 (LIVE 2023.09.13 無力無善寺)”を
音楽配信サービスで聴く
ストリーミング / ダウンロード
- 1
縄文の雪 (LIVE 2023.03.02 無力無善寺)
鈴木 諭
- 2
欲かげば (LIVE 2023.03.02 無力無善寺)
鈴木 諭
- 3
先祖へ会いに常陸へゆく (LIVE 2023.06.29 八王子びー玉)
鈴木 諭
- 4
真っ暗闇は知っている (LIVE 2023.08.18 新宿ruto)
鈴木 諭
- ⚫︎
金閣寺余話 (LIVE 2023.09.13 無力無善寺)
鈴木 諭
- 6
池袋の蒸し暑い夜 (LIVE 2023.10.04 新宿ruto)
鈴木 諭
- 7
高田馬場で末廣ラーメン (LIVE 2023.12.01 新宿ruto)
鈴木 諭
- 8
音楽よ、有難うございます。 (LIVE 2023.12.06 無力無善寺)
鈴木 諭
- 9
秋田の冬を描き止める (LIVE 2023.12.12 無力無善寺)
鈴木 諭
- 10
64ブルース (LIVE 2024.01.11 無力無善寺)
鈴木 諭
- 11
2023年末、秋田駅前散歩 (LIVE 2024.03.02 新宿ruto)
鈴木 諭
- 12
相談事 (LIVE 2024.03.02 新宿ruto)
鈴木 諭
- 13
森岳温泉に行った亀 (LIVE 2024.03.08 無力無善寺)
鈴木 諭
- 14
落花生 (LIVE 2024.03.08 無力無善寺)
鈴木 諭
- 15
仮病で神戸 (LIVE 2024.04.21 炭銀楽園)
鈴木 諭
- 16
栗羊羹 (LIVE 2024.05.09 無力無善寺)
鈴木 諭
ライブで披露したきりで音源化されていない楽曲を集めて収録した、特殊なライブアルバム。このままだとこれらの曲は散逸し、遺失すると考えたので発表して残しておこうとした次第である。収録場所は無力無善寺・新宿rutoなど、東京時代に根城にしてた店の名が散見される。本作の曲は、今後再び演奏される事はあるのだろうか。それは誰にも分からない。
アーティスト情報
鈴木 諭
地獄の詩世界と秋田弁ブルースを唄う、裏日本シンガー。じゅんさい王国(旧・山本町)出身。2023年頭より弾き語りを本格始動し、代表曲に『犬の川』『アトピーのうた』 『亀のいる木橋』などがある。「東北の情念的な系列」と評される文学的かつ厭世的な歌は、各所で高い評価を得ている。またもう一つの持ち味である秋田弁ブルースも「何を言ってるか全く分からないけど面白い」等の声を集め、人気を博している。精神疾患の再発を機に、療養を経て2026年より拠点を秋田に移し活動再開した。
鈴木 諭の他のリリース
哥処 墨林庵



