永久汽缶のジャケット写真

歌詞

モキュメント

貝と蜃気楼

街は白い霧に呑まれた。

人は一人ずつ消えていった。

立ち入り禁止区域の奥からは、

低いいびきが聞こえている。

街は白い霧に呑まれた。

僕は一人になって思い知った。

退屈ってやつは精神を殺すんだ。

なんて、一人じゃ狂っていたって変わりない。

超常現象研究会は解散していないから、

僕はフェンスの奥に進んでみようと思うんだ。

「超常現象研究会による調査報告書」ってタイトルで

退屈な物語でも書いてみようと思うんだよ。

再生回数100回以下のモキュメンタリーは

今もあのサイトに置き去りになっているだろう。

大抵書いたお話なんてすぐに忘れてしまうし、

大体手作りのUMAだって僕だけが見飽きている。

僕も君も、カメラを回していた誰かだって、

いつか来る終末をあんなに待ち望んでいたはずなのに、

会員はもう誰一人この町に残ってはいない。

観測外の世界はきっともうどこにもなくて、

白煙の中にいる僕が最後の一人だった。

試行回数1045回目の冒険で、

僕はようやく立ち入り禁止区域の最奥に辿り着く。

繰り返される一日じゃ昨日も今日と同じ曇り空で、

眉毛の一本だって昨日と同じ長さをしているだろう。

上書きされない記憶だけじゃ僕を証明できはしない。

例えば一日が死ぬごとに一人の僕も死んでいくなら、

それだってきっと永遠と呼べるんだろう。

永遠を夢に見ない僕が最後の一人だった。

生まれ落ちる前に見た赤と

最期に見ていたペールブルー

失くした5つめの季節と

透明になるせかいの結末を

煙に巻いた

呑み込んだ霧が僕になって、

消えた誰かの記憶が僕になって、

僕を観測する人はどこにもなく、

僕はだんだん霧に溶けていく。

ただこの先に何かが待っていると確信して、

それすらも僕の妄想なのかもしれない。

狂ってしまいたいんだ、こんな物語で!

再生回数100回以下のモキュメンタリーは

今もあのサイトに置き去りになっているだろう。

とんだ三文芝居だって笑っていたはずの、

あの子は今や僕と同じ一匹の魚になっている。

感覚と記憶は一つになってしまったみたいだ。

いつか来る終末をあんなに待ち望んでいたはずなのに、

会員はもうみんな一つの煙になってしまったみたいだ。

観測外の世界はきっともうどこにもなくて、

白煙の中にいる僕たちが最後のイデアだ。

ふと目を覚ましたとき、

僕はただ、乳白色の霧の中に立っていた。

迷路みたいに張り巡らされていたパイプ、排気口、白い壁、

何もかもが背後の霧の中に消えてしまったようで、

方向感覚を失くしたまま、

ただ顔を向けている方に足を踏み出した。

進む、進む、草を踏む音だけを頼りにして、

僕はどこから来てどこへ行くのだろうか。

やがて、霧の向こうに、錆色の巨大な影が姿を現した。

僕の遥か頭上にまで届く、、

丸みを帯びた二つの殻の合わせ目から、

白い寝息が漏れ出して、

ああ、僕はこれをとうの昔から知っていたのだ。

自分が何者であるのか、もはや忘れてしまった僕の眼前で、

そこに佇んでいるそれは、

ただ、ひとつの巨大な貝だった。

生まれ落ちる前に見た赤と

最期に見ていたペールブルー

失くした5つめの季節と

透明になる僕の結末を

煙に溶かして

怪物はただ寝息を吐く

ここが天国なんだって

誰が言った

  • 作詞者

    小宵

  • 作曲者

    貝と蜃気楼

  • ミキシングエンジニア

    KYOTOU-O

  • マスタリングエンジニア

    神楽坂ヨシキ

  • ギター

    KYOTOU-O, 神楽坂ヨシキ

  • ベースギター

    MiNT

  • ドラム

    634

  • ボーカル

    小宵

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アーティスト情報

  • 貝と蜃気楼

    耳を劈く轟音に物語性の高いリリックを乗せて鳴らすオルタナティヴ・ヘヴィ・ロックバンド。そのサウンドはスラッジコア、ブラックメタル、ハードコアパンク、シューゲイザー、USインディーなど様々な音が渾然一体となった唯一無二のものだ。メンバーは、小宵(Vo)、KYOTOU O-EⒶST SHIBUYⒶ(Gt)、ヨシキ(Gt)、MiNT(Ba)、634(Drs)の5人組。その内、小宵とKYOTOU O-EⒶST SHIBUYⒶの2名がVtuberという異色の構成だ。2022年4月に1st EP『人魚の骨』、同年10月に1st Album『七日目の街』をリリースし、また2022年5月にはおやすみホログラム主催のライブ「打奏驚蛇」に出演、同年12月にはレコ発ライブ「七日目のパレード」を主催するなど、ステージパフォーマンスにも力を入れており、破壊的な演奏が評価されている。最近ではASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文がホストのpodcast AVMTのVOL.36にて1st Album 所収「安息日」が週のプレイリストに選曲されるなど、その存在感はあらゆる音楽シーンにおいて日々いや増しつつあり、今後も決して目が離せない。

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