

夜 王はひとりになる
賛歌も祈りも鳴り止み
残るのは 心臓の音と
指輪に絡みついた冷たさだけ
ピアノが静かに 寝台への歩数を数える
ヴァイオリンが 寝息の代わりに
長いロングトーンを重ねる
灯を落とせば 影だけが増える
超早口で脳裏に差し込む声
第一の影が 知識を囁く
第二の影が 権力を勧める
第三の影が 愛を約束する
第四の影が 全部捨てろと笑う
声は七十二 耳は二つ
一つも掴まなければ静かだが
無視し続けるには
誘い文句が魅力的すぎる
笛が柔らかく 囁きの軌跡を描く
合唱が遠くで
「選べ」とも「選ぶな」ともつかない声で揺れる
王の知恵は
聞き分けるための刃でもある
七十二の声が囁く夜
ソロモンは沈黙を探している
神の声でも 悪魔の声でもなく
誰にも属さない
自分だけの静けさを
しかし指輪の内側から
次々に言葉が立ち上がり
知恵の王の思考を
それぞれ違う方向へ引き裂いていく
ピアノが細かい分散和音で
揺れる思考を写し取る
ヴァイオリンが 高音で
緊張した脳の痛みをなぞる
超早口で反論を並べる
「それは必要以上だ」「王国は壊れる」
「それは甘すぎる」「誰かが泣く」
しかし影たちは笑ってみせる
「泣く者の数を減らすために
我らは契約されたのではないのか?」
言葉の矛盾を突かれるほど
知恵は刃毀れしていく
正論も誘惑も
似たような顔をして迫ってくる
フルートが絡み合う旋律で
七十二のラインを描く
合唱がその中から
かろうじて一本の軸を見つけようとする
七十二の声が囁く夜に
王はたった一つの答えを選べない
だからこそ
どの声にも完全には従わず
どの声も完全には切り捨てない
中途半端で 優柔不断で
人間らしすぎるバランスの上で
朝を待つ
それを知恵と呼ぶかどうかは
神と影のどちらが判定するのか
夜明け前 一瞬だけ
全ての声が同時に黙る
その刹那に訪れる
耳鳴りのような静寂こそが
王にとって唯一の安息だった
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- 1
預言された王冠
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- 2
指輪に刻まれた七十二の名
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- 3
第一の契約、沈黙の円環
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- 4
玉座の下の牢獄
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- ⚫︎
七十二の声が囁く夜
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- 6
裂け目としての知恵
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- 7
王と影の審判
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- 8
指輪を外した朝
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アーティスト情報
Story Sound-notes
ダークで少し不思議、でも耳あたりはチル。ローファイ/ヒップホップ/ジャズのエッセンスを少しだけ織り込み、読書・勉強・作業・休憩に寄り添うサウンドをお届けします。童話や旅人、魔女、古書、霧の森……そんな“情景”から生まれた曲や、物語をなぞるプレイリストも公開中。
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