ミニチュアサイズの鉄の塊が
並んで蠢いているのがよく見える
眺めは良好だ
ここは地上152mにあるWTC最上階の落ち着いたラウンジ
時刻はおおよそ日の入り前
夕日に満たされた穏やかな天空
少し曇ってはいるが至って眺めは良好だ
自然と呼吸が深くなるゆったりと
時計の秒針を後ノリ気味でカウントしてみる
1、2、3、、
ひと気のしない空間にこだまする子供の声
あまりの解放間に二歳児くらいの男の子がはしゃいでいる
見渡せば360度はめ殺しの窓
近くを飛ぶヘリに手を振ってみる...が突如監視カメラが気になりだす
着かず離れずほとんど同じ速度で走る小さな電車
まるで競争するムカデのようだ
山手ムカデと京浜東北ムカデ
クラプトンのライブまであと2時間弱
まだ日は落ちない
空調が効いていて涼しいこのラウンジ
今日は昼間20℃近くまで上がった2月最後の日
あれ?閏年っていつだっけ?
冬季オリンピックが終わったばかりだからあと2年後か
高く高く跳んだ浅田真央
あの世界はほんとに険しいな
若くして自分との闘いをあそこまで強いられるんだ
俺ならと考えてみる...が耐えられそうにない
組み立て中のビルのてっぺんに乗るクレーン車
この窓から見えるだけでも少なくとも20基はあるだろうか
ひとつひとつのクレーン車がそれぞれの方向を向いて待ち構えている
さて何を撃ち落とそうか
徐々に地上を走る車の
いや、蠢く鉄の塊が発するブレーキランプが目立ってきた
曇り気味の空を照らす夕日
さっきまではしゃいでいた男の子がじいっと仄赤い空を見つめている
言葉にはし難い神秘的な光景だ
気付けば地上はもうだいぶ暗い
60mを超えるビルに設置してあるという
テン、テン、と赤く点滅を繰り返す航空障害灯の数々
夕日の落ちる速度に息を飲む
早まる鼓動
隠れ際に最も明るくみせたのは
乾電池が切れる間際にみせる最期の時なんかによく似ている
LightsForTheWTC
昨日読み終えたばかりのとある漫画の最終巻を思い出す
LightsForTheWTC
それぞれの営みが微妙に絡み合うパラレルワールド
LightsForTheWTC
- 作詞
gaku
- 作曲
gaku, Hiroyuki Kanda
nada.acarph の“LightsForTheWTC (feat. gaku)”を
音楽配信サービスで聴く
ストリーミング / ダウンロード
- 1
indigo blue motion
nada.acarph
- 2
flicker rhythm
nada.acarph
- ⚫︎
LightsForTheWTC (feat. gaku)
nada.acarph
- 4
parallel flow
nada.acarph
- 5
moment
nada.acarph
- 6
Silver Lounge
nada.acarph
アーティスト情報
nada.acarph
東京在住のトラックメイカーHiroyuki Kandaによるソロプロジェクト。 『意識が体の内側に向かっていく音』をコンセプトに コンピューター、サンプラー、アナログシンセを用いて聴き手が自身の世界に入り込む為の楽曲を制作している。 制作のテーマは自身で行った事のある場所の景色、匂い、感触。 感覚をトランスして心をチルする音を追求している。
gaku
a. records