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彼の言葉は完全な事実ではないが真実です。
彼は初めて詩を紡ぎました。
その詩には彼の人生が反映されています。
彼はその詩をテープ に吹き込みました。
彼の声は寂しくも、厚かましく逞しい魂そのものです。
私はその声にメロディーを重ねました。
彼は私の友人です。
異変が起きたのはあの夜からだ。--ガリガリ君の「あたり」を3連続で出してしまったあの夜からだ。 おれの脳は一体どうなってしまったんだろう? 前触れもなく猫アレルギーになった中学時代と同様、なぜだか突然メロディーが浮かぶ体質になってしまった。 通勤途中の駅のホーム。脳から湧きでてくるメロディー。 慌てるおれ。取りだすスマホ。録音アプリ起動。 --鼻歌を歌いながら得意先へ電話をするカジュアルな男と見せかけて、メロディーを忘れないよう録音する毎日だ。ホームのJKの視線が痛くてしょうがない。 それでも曲を形にして再生ボタンを押せば、些細な羞恥心なんて吹っとぶ。 おれは体を震わせながら、いつだってこう思う。 「――神曲じゃねえか」と。 正直、これからおれがなにをしたいのか自分でもよくわかっていない。ただこれだけは確かだ。 今のおれは、ロッカーだ。