

からっぽの操縦士
漕ぎだせない航海士
待合室で
ぼくは時計とけんかする
煙草を嚙みしめ
小刻みにかかとでビートを刻む
いつの間に乗ってた?
行方知れず
霧の中につつまれ
切立った崖のうえ
地図にもない道を
転がりつづける
バスの中
朝の新聞受け
窓越しにみえる氷の結露
午後の定期便
鳴りやまぬ不在の電話のベル
いつか見たこの町
行方不明?
そうだ夢に出ていた
ぼくの死亡通知だ
間違いだと訂正する気にも
もう
なれない
つまるところ
ぼくはいない
ここにいない
どこにもない
バスのなかに
閉じこめられ
ぼくはもう
帰ってこない
だろう
15分ごとに
きみのことを思いだしている
揺れる路面から
気味の悪いエンジンの割れる音
「どちらまで行くのですか?」
わからないよ!
年老いた車掌が
ぼくに切符を手渡す
その切符に書かれた行く先は
Nowhere
Nowhere
Nowhere to go
とどのつまり
ぼくはひとり
ここでもなく
どこでもない
会社はなく
家庭もない
ぼくは孤立
して生きてる
たぶんきみは
知らないけど
ぼくはいない
いつの間にか
バスのなかで
揺られつづけ
ぼくはもう
帰る術さえ
もう、ない
- 作詞者
岩下啓亮 Sardine
- 作曲者
岩下啓亮 Sardine
- プロデューサー
岩下啓亮 Sardine
- レコーディングエンジニア
岩下啓亮 Sardine
- グラフィックデザイン
岩下啓亮 Sardine
- シンセサイザー
岩下啓亮 Sardine
- ボーカル
岩下啓亮 Sardine
- プログラミング
岩下啓亮 Sardine

岩下啓亮 Sardine の“かくも長き不在”を
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ストリーミング / ダウンロード
- 1
Baby Understand
岩下啓亮 Sardine
- 2
思い出は甘くない
岩下啓亮 Sardine
- ⚫︎
かくも長き不在
岩下啓亮 Sardine
- 4
Girl Hunt '84 in the city, on the beach
岩下啓亮 Sardine
- 5
こわさないで
岩下啓亮 Sardine
- 6
こんなたくさんのラブソング
岩下啓亮 Sardine
- 7
アンソニーにくちづけ
岩下啓亮 Sardine
- 8
ハンマークラーヴィア
岩下啓亮 Sardine
- 9
マイ ガールフレンド
岩下啓亮 Sardine
- 10
長い日曜日
岩下啓亮 Sardine
- 11
Music in the Air
岩下啓亮 Sardine
カセットガジェットシリーズ第3弾は、1985年の東京6曲と1987年の熊本5曲の、2時期の音源を収録した。
その間の1986年のアルバムは名盤(だと自分だけ思っている)「Everything/Nothing」に収録している。
1985年は精神的にも技術的にも限界を迎え、1987年は宅録という概念自体に疑問を感じていた時期である。だからこの2年間の作品はあまり好きではないし、まとまりに欠ける作品集ではあるものの、個別に見れば各曲それぞれに魅力がある。最低のときでもイワシの音楽はいつだってポップだ。偏見なく聴いてほしい。
追記。今の私は喫煙者ではない。
アーティスト情報
岩下啓亮 Sardine
鰯こと岩下啓亮 Sardineです。 1983年から2003年までの20年間で、ひとり多重録音した楽曲が約200曲あります。これらを8枚のアルバムにまとめて2024年に順次アルバムをリリースしました。2025年はアンソロジーの代わりに、年代順に編集したアルバムを発表します。 その音楽は、多種多様です。親しみやすいポップスもあれば、社会的視点をそなえたメッセージソングもあります。プログレッシブな構築性もあれば、パンク的な破壊志向の側面もあります。手ごわいピアニストで、マッドなシンセサイザー弾きで、たどたどしいギタリストで、音の読めるベーシストで、緩いリズムのパーカッショニストで、ひとり多重コーラスを駆使する、不器用なシンガーソングライターです。それらすべてのパートが、一つの人格に統合されているのです。 ロマンチックと薄情と情熱の混淆、とりとめもない不安と届かぬものへの憧憬を描いた、オールディーズだけどもエヴァーグリーン。表情豊かな鰯の音楽を、ぜひお聞きください。
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