

八月十六日 日が暮れて
鴨川の風がふと止まる
橋の上の人々が
東の山を待っている
最後に届いた小包
底に敷かれた古新聞
曲がった胡瓜と短い手紙
「ちゃんと食べていますか」
「京都にいるなら一度くらい
私も送り火を見たいな」
来年おいでと答えたまま
来年だけが 来なかった
山の闇に「大」の字が灯り
人波の声が静かになる
あなたの知らない京都の夜を
今夜は僕が案内するよ
ほら 見えるかい 母さん
あれが話していた送り火
遅くなってごめんねと
炎の向こうへ呼びかけた
入学した日の六畳間
カーテンを掛けてくれたあと
「ここならきっと大丈夫」
寂しいくせに笑っていた
卒業しても残った街で
仕事の話ばかりをして
あなたの歳も 丸い背中も
見ないふりをしていた
最後の電話の終わりにも
「また今度」と僕は言った
あなたは何も責めないまま
いつものように「元気でね」
見せたかった京都の火を
今夜あなたに見せています
隣にひとつ空けた場所で
同じ夜空を見ていますか
送り火が消えるまで
もう少し ここにいてほしい
言えずに残った「ありがとう」が
胸の奥で燃えている
遠くからは一文字でも
近くにあれば 幾つもの火
朝の味噌汁 畳んだシャツ
濡れた鞄を拭くその手
名もない日々のひとつひとつが
僕をここまで連れてきた
愛していると言わなくても
あれは確かに 愛だった
母さん 僕は大丈夫
今度はもう嘘じゃないよ
あなたに見せたかった京都で
あなたにもらった日を生きる
送り火が細くなり
最後のひとつが闇に溶ける
さよならよりも「ありがとう」が
多すぎるから 涙になる
帰り道の小さな店で
かぼちゃをひとつ買いました
明日はあなたの煮物を
思い出しながら作ろう
少し薄くなりそうで
あなたが笑った気がした
- 作詞者
Alexsophie
- 作曲者
Alexsophie
- プロデューサー
Alexsophie
- ソングライター
Alexsophie
- プログラミング
Alexsophie

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送り火が消えるまで
Alexsophie
アーティスト情報
Alexsophie
私はソングライティング・アーティストとして、自身のビジョンと言葉を起点に楽曲を設計しています。 制作ではAIを編曲や音像設計を拡張するための制作ツール(楽器)として活用し、最終的な表現と判断はすべて自ら行っています。 Alexsophie名義で、Apple Music、Spotify、Amazon Musicなど主要音楽配信プラットフォームに作品をリリース。 YouTubeでは楽曲作品を、Instagramでは制作過程や作品世界を発信しています。 アーティスト名は、愛犬Alexと愛猫Sophieに由来します。 人間の感性とテクノロジーの可能性を融合させ、静かな余韻と物語性を大切にした楽曲制作を行っています。
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