

雪に閉ざされた街 病室の窓
小さな手のひらに 命の灯(ひ)が揺れる
季節は五歳の冬 治療の手立ては尽きたと
医師の言葉が 凍てついた空気に響く
「好きなものを、食べさせてあげて」
その静かな声に 震える父は問う
「ねえ、なにが食べたい?」と
痩せた声で 答えたのは 季節外れの夢
「ぶどうが食べたいの」 たったそれだけの小さな希望
それはまるで 遠い夏の日の残像
命の奥で 輝く 生きる喜びの粒だった
冬の街には どこにもない 季節を間違えた願い
それでも父は 「できない」とは言えなかった
朝から東京じゅうの店を回り 「どこにもない」と告げられた
断わられるたび 走った 雪の溶けたアスファルト
父の胸に焦燥が 鉛のように積もる
それでも 「できない」とは言いたくなかった
夕方、最後に辿り着いた デパートの光
もう一度だけ、震える声で尋ねた
「ぶどうは、ありませんか」と
「ございます」 耳を疑う 奇跡の言葉
案内された先に 三万円の壁が立ちはだかる
入退院に費やした日々の後 父は深く頭を下げた
愛は金には届かない 限界の淵
それでも絞り出した 最後の願いの叫び
「一粒でも 二粒でも 分けていただけませんか」
事情を聞いた店員は 無言で箱を開けた
その手が 絶望の冬を破る 優しい力だった
たった 一粒のぶどう 季節外れの太陽
その 二千円の優しさが 命の粒を運んだ
痩せた指が 摘み上げた 愛の奇跡
「おいしいね」と 響く声
父の願いは 冬を越え 甘く 娘を満たした
「ほんとにおいしい」 その言葉を最後に
娘は安らかな まどろみ へと旅立った
父はただ 震える手で その手を包み
胸に当てた 優しさの包み紙と動けずにいた
ぶどうは季節外れでも 願いは季節を越えた
最後の一粒は 確かにひとつの人生を甘く満たした
あの日の厚意で 優しさは語り継がれ
一粒のぶどうは 永遠(とわ)の希望となった
誰かの愛と 無言の思いやりが
この世界に 小さな灯(ともしび)を灯す
季節は巡っても この優しさが
今も、誰かを 支えている
- Lyricist
hiyutan
- Composer
hiyutan
- Producer
hiyutan
- Vocals
hiyutan
- Piano
hiyutan

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A small act of kindness
hiyutan
ひゆたんのファーストシングル
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hiyutan
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