

冷めたマグの底に、さっきまで眠っていた光を少しだけ混ぜると、
表面がかすかに波打って、その揺れの中に時間のかけらが沈んでいくのが見えた。
街はまだ完全には目を覚まさず、アスファルトの奥で誰かの足音が遠くに響いては途切れ、空気の層を撫でるようにして消えていく。
ソファの角に残った体温は、人の形を保ったまま静かに冷えていき、そのぬくもりの残骸が、この部屋のどこかで未練のように漂っている。
夜の匂いは消えきらず、微かな甘さと鉄のような苦みを残したまま、呼吸の奥にこびりついて、誰の記憶ともつかない影を揺らしている。
思い出というものは、いつだって音を持たずに滲み出してくる。
触れようとすればするほど輪郭を失って、手のひらには「重さ」だけが残り、確かにそこにあったはずのものを指が覚えているのに、掴むことも壊すこともできないまま、沈黙の底へ落ちていく。
──午前4時のコーヒー。
その苦さは、胸の奥のいちばん深い場所にだけ届いて、君の笑い声が、まだどこかで泡のように浮かび上がり、すぐに消える。
飲み干せない時間のなかで、心だけが、わずかに動いている。
世界が止まって見えるのに、自分だけが流されているような、そんな錯覚の中で。
消えかけたメールを開いては閉じ、そこに何もないと知りながらも指が画面を滑っていく。
知らない誰かの朝がもう始まっていて、その人の笑い声や、流れるニュースや、食卓の湯気が、こちらの沈黙と同じ時刻を過ごしていることが、なぜか遠い物語のように思える。
風が窓を叩く音がして、その衝撃で部屋の空気が少し震えた。
まるで外の世界が、こちらを確かめるように、ひとつだけ小さな合図を送ってきたようだった。
それでも、この場所は動かない。
秒針が刻む音だけが、かろうじて生きているもののように続いている。
名前を呼ぶには遠すぎて、声にした瞬間にすべてが崩れてしまう気がして、ただ唇を閉じたまま、君の姿を思い浮かべる。
誰にも届かないその想像の中で、君は息をして、笑って、また黙る。
その沈黙が、どうしようもなく現実的で、どうしようもなく幻だった。
──午前4時のコーヒー。
苦さが胸の奥に残り、眠れぬ夜の粒をひとつ、舌の上で転がしている。
冷めた心を温めるように、息を吸って、吐いて、また吸って。
時間の流れに逆らうようにして、もういちど君を想う。
それだけが、夜を延ばす唯一の方法のように思えた。
時計の針が止まる音が聞こえた。
その音が、なぜだか優しく感じられた。
まるで、止まることこそが救いであるかのように。
時間が進むのではなく、ただ「ここに滞る」ことだけが、いまの世界をつなぎとめているようだった。
その滞りの中で呼吸を数え、残り香を確かめ、最後の一口を飲み干すふりをした。
マグの底には、まだ見えない朝が沈んでいた。
──午前4時のコーヒー。
それは、過去と未来のあいだでかすかに立ちのぼる、誰にも届かない蒸気のようだった。
- 作詞者
Galactic (Fire) kids
- 作曲者
Galactic (Fire) kids
- プロデューサー
Galactic (Fire) kids
- ボーカル
Galactic (Fire) kids

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スロウ
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夜はそばで歌うだけ
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欠ける
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- ⚫︎
午前4時のコーヒー
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- 15
月が沈むころ
Galactic (Fire) kids
アーティスト情報
Galactic (Fire) kids
Based in Okinawa/Japan 都市の夜気や心の揺らぎを「日常に潜む現象」として映し出し、 「純粋な心で内にある熱を見つけ、それを宇宙のように広げたい」という思いを込めている。
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