Rakuen Front Cover

Lyric

Rakuen

98

去年より早く真夏日が

来るらしいって君が言う

茹だるような熱と

深すぎる青天井を思い出す

不思議なもんだよ、

君が夏を待ち侘びているなんて

病弱な躰もたげて今、

季節の向こうまで

包帯がまだ取れないから

仕舞ったまま、君のギター

今はせめて歌を歌おう、

乾いた喉を嗄らして

昔に言いたかった言葉も

もう忘れてしまったし

君の紡いだ旋律を呑んで

頭を満たした

陽射しに焼けた頁

本棚の奥に押し込んだ

変わり映えしない日々でもいい

今日も君と笑っていられるなら

何も嫌いたくないから

瞼を閉じた君を

連れ出して遠くへ行こうよ

誰も追いつけない最高速度で

快晴のち入道雲、夕立に降られても

君が居る、また明日に笑む

あの街を抜け出して

二人だけの夏が来る

帰る時間はもう忘れて

四阿で薄暮に耽る

楽園と呼ぶには不恰好だけど

それでもいいだろう

語らうことはとうに尽きて

水平線を見渡す

海は凪いだのに何故だろう、

君の声が聞こえない

夏に颪吹く

夜風が君の髪を撫でる

浅い呼吸に騒めく

確かにあの季節の匂いがしている

何も奪いたくないから

部屋の隅、泣く君を

知らないような振りした

屋上階に立つ君の手を取るまでは

定命さえ逃避してさ、

いつまでも笑っていよう

じきに今も過去になる

その時まで僕が

生きていく意味になるから

落とした夢を君は拾い集めて

「暗いよ、暗いよ」なんて

怯えてばかりいる

君のために作ったはずの

青春のエンドロールが

首を絞めつけていた

何も嫌いたくないから

楽園を出た君の

後を追って熱帯夜を抜けた先、

一番線立つ無人駅

どうして胸が痛いんだよ、

捨てたはずの心が

涙色に白む君はギターを

その手に掻き鳴らし始めた

何も失いたくないとか

人の身には傲慢だ

躓いて諦めても

あの空への憧れはもう止まらない

快晴のち入道雲、夕立に降られても

君は往く、また明日に往く

痛みすらも抱えて二人、

夏を追い越していく

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    98

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    98

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