

私は、その男の写真を三葉見たことがある。
一葉は、その男の幼年時代、とでも言うべきであろうか、
十歳前後かと推定される頃の写真であって、
その子供が大勢の女のひとに取りかこまれ、
首を三十度ほど左に傾け、醜く笑っている写真である。
第二葉の写真の顔は、とにかくおそろしく美貌の学生である。
血の重さ、とでも言おうか、いのちの渋さ、とでも言おうか、
それこそ鳥のようではなく、羽毛のように軽く、
ただ白紙一枚、そうして、笑っている。
キザと言っても足りない。軽薄と言っても足りない。
もう一葉の写真は、最も奇怪なものである。
まるでもう、としの頃がわからない。
頭はいくぶん白髪のようである。
こんどは笑っていない。どんな表情も無い。
この手記を書き綴った狂人を、私は、直接には知らない。
恥の多い生涯を送って来ました。
自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです。
人間のいざこざに出来るだけ触りたくないのでした。
おそろしいのでした。
そこで考え出したのは、道化でした。
世間とはいったい何の事でしょう。(死にたい、いっそ、死にたい)
飲み残した一杯のアブサン。(もう取返しがつかないんだ、無駄になるだけなんだ)
永遠に償いがたいような喪失感を(恥の上塗りをするだけなんだ)
こっそりそう形容していました。(死にたい、死ななければならぬ、生きているのが罪の種なのだ)
「世間というのは、君じゃないか」
ああ、人間は、お互い何も相手をわからない、(侘しい)
まるっきり間違って見ていながら、(侘しい)
無二の親友のつもりでいて、一生それに気附かず、(侘しい)
相手が死ねば泣いて(侘しい)
弔詞なんかを読んでいるのではないでしょうか。
侘しい
侘しい
- 作詞者
津堂獣
- 作曲者
津堂獣
- プロデューサー
津堂獣
- シンセサイザー
津堂獣
- ボーカル
海来
- ソングライター
津堂獣
- その他の楽器
津堂獣
- ライセンスされた歌詞
太宰治

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