灰皿に口づけのジャケット写真

歌詞

灯りを消したあとで

夏目そら

拍手が途切れた 古いキャバレー

赤い幕には 夜のしわ

飲み残しのグラスの氷が

小さな音を立てていた

「また来るよ」と手を振る客に

笑ってお辞儀を返しながら

今日もひとつ 夜を脱いで

楽屋の鏡の前へ向かう

若い頃には知らなかった

花束よりも嬉しいもの

熱いお茶をすすりながら

靴を脱ぐこの瞬間

恋に破れて泣いた日も

拍手に救われた日もある

どちらが本当のあたしかと

鏡に問いかけてみるの

綺麗ねなんて言葉より

「お疲れさま」が沁みる夜

強い女と呼ばれても

ひとりになれば普通なの

灯りを消したあとで

あたしは誰に戻るのかしら

口紅を落とした素顔まで

愛してくれる人はいたのかな

灯りを消したあとで

拍手の余韻を抱きしめる

笑って歌った夜たちが

静かに胸で眠ってる

カウンターのママが

売上帳を閉じながら

「今日はよく入ったね」

そう言って笑った

誰かが忘れた白い手袋

片方だけが椅子に残り

窓の外では新聞配達の自転車が

朝を運んでいる

若さだけでは越えられぬ

夜をいくつも歩いたわ

悔しさ噛んで歌った日

涙を隠して踊った日

夢はいつでも気まぐれで

追いかけるほど遠ざかる

それでもこの声だけは

裏切らずにいてくれた

男の嘘より厄介なのは

諦めきれない夢ね

それでも明日も舞台へと

ヒールを鳴らして向かうのよ

灯りを消したあとで

やっと自分に会えるのね

傷ついた日の優しさも

拍手の中の孤独さえも

全部あたしの人生よ

灯りを消したあとで

明日へ続く扉を開く

この声がまだ枯れぬなら

歌い続けてみたいの

もう少しだけ

もう一度だけ

夜明けのその先まで……

真珠のイヤリングを外したら

窓の向こうが白みだす

ネオンの消えた街並みに

新しい朝が流れ込む

「おはよう」

誰に言うでもなく呟いて

あたしはまた

口紅を引くのよ……

  • 作詞者

    夏目そら

  • 作曲者

    夏目そら

  • ミキシングエンジニア

    夏目そら

  • ギター

    ポン汰

  • ドラム

    ポン汰

  • ボーカル

    ポン汰

  • ピアノ

    ポン汰

  • サックス

    ポン汰

  • アコーディオン

    ポン汰

  • その他の楽器

    ポン汰

灰皿に口づけのジャケット写真

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ネオンに揺れた恋も、嘘に濡れた夜も、拍手に包まれた舞台もあった。

愛されることを夢見て、傷つきながらも口紅を引き直し、朝を迎えてきた女たちへ。

『灰皿に口づけ』は、昭和のジャズ歌謡とブルースの香りをまとった、大人の女性たちの物語。

雨に消えた約束。
赤いヒールに隠したため息。
港の灯りに重ねた願い。
鏡の向こうで微笑む、あの日の自分。

恋をしたからこそ優しくなれた。
涙を知ったからこそ、強くなれた。

これは、誰かを恨むための歌ではなく、
愛した日々に「ありがとう」と口づけを贈るためのアルバム。

煙のように消えていった思い出さえ、
きっと人生を彩る宝物だったのだから。

アーティスト情報

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