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TOMCの2022年以来のフル・アンビエント・アルバム『Shared Senses』は、都市のなかで人々の感性がふと通い合う瞬間や、そうした瞬間への人々の願い・希望を形にしたコンセプチュアルな作品です。

無数の人々が行き交い、さまざまな構成要素に取り囲まれ、それぞれの生活のなかで小さなドラマが生まれ続ける都会の生活。それを具体化するような試みが、本作には多数存在します。
例えば、A・B面それぞれに配された2曲の大作、「Shared Senses」「True Blue Parade」では、複数の異なるBPMのトラックが一定の周期のもとで絡み合う「ポリBPM」を採用しています。
また、「En」、および「Crowded Streets, Empty Bars」の間奏は、TOMCがフリーソフトAudacityで編み出した独自の立体音響が使用されています。

アルバムのSide Aは、そうした人々の心の機微を描いた楽曲が並びます。
特に「Madoisen」は、日本の多くの小学校で放送されるドヴォルザーク/フィッシャーの歌曲「Goin' Home (遠き山に日は落ちて)」から着想を得た、このアルバムの優しさを象徴する一曲です。

Side Bは、都市の景観を俯瞰的な視点で捉えたような、映画的な楽曲が配されています。
The Blue Nileの歌詞の一節から着想を得た、ドラマチックな構成を持つ「Crowded Streets, Empty Bars」はその最たるものです。また、東京の西新宿〜笹塚の実在のエリアをモチーフにした「Opera City」のような楽曲も収録されています。このSide Bは、そうした都市のなかで繰り広げられる人々の生活・営みを賛美するような、1曲目「En」のリプライズ的楽曲「En II」で締め括られます。

東京の生活とカール・ユングを結びつけ、全曲4分33秒で纏められた2022年作『Music for the Ninth Silence』。1980年代の東京をモチーフにした如月小春の代表的戯曲(リブート版)のサウンドトラック作品である2023年作『MORAL』。
これらの作品が示すように、TOMCはキャリアを通じて、都市および都市生活者にとってのアンビエントの在り方を模索し続けてきました。本作『Shared Senses』は、そうした彼の試みが結実した、都市型アンビエントの新たなマイルストーンとなるアルバムです。

現在プレイリストイン

Crowded Streets, Empty Bars

Spotify • Japanese Ambient/New Age/Kankyo Ongaku (環境音楽)

過去ランキング

Crowded Streets, Empty Bars

iTunes Store • インストゥルメンタル トップソング • 日本 • 54位 • 2024年10月11日

アーティスト情報

Kankyō Records