歌詞

終わりを告げる放送が　静脈をゆらし

薄翳のホームに　白い息が重なる

旅先も告げずに　切符は掌で折られ

行き場を失くした夜だけが　線路を照らす

吊革の影が揺れて　遠心の鼓動を促す

光の粒が滲み　視界はわずかに歪む

秒針をのみ込むように　呼吸を整え

胸裏で　そっと数える　3 2 1

終電ワルツ　鼓動が伴奏

途切れた口づけの残渣を　足取りで塗り替え

独りでも舞えると知った　無声のプラットフォーム

君のいない拍を集め　夜明けまで踊る

自動販売機の硬貨音　薄い金属の雨

踵が描いた譜線に　記憶の影が溶ける

風は指揮棒のように　消灯前の星を煽り

思い出は回転扉　出口が見えぬまま

ガラスを伝う冷気が　過去を貼りつけ

月光の細波が　線路を撫でて返す

もう戻れぬと悟るたび　心が軋み

その度　息を潜めて　3 2 1

終電ワルツ　鼓動が伴奏

残響のひだまりを　ステップで書き換え

独りでも舞えると知った　無声のプラットフォーム

君のいない拍を集め　夜明けまで踊る

灯の消えかけた街灯が　琥珀の雫を垂らし

涙の代わりに揺れる　仄かなしょっぱい風

折り畳んだ切符は　行先を消し

線路の向こうで　未明が手招きをする

終電ワルツ　影を抱きしめ

揺籃の鉄柵が　希望をそっと弦に変える

ホームの端で　掌を振るたび

遠ざかるモーター音が　未来を諭す

終電ワルツ　鼓動が伴奏

消せない足跡を　雪明りが照らす

独りでも舞えると知った　無声のプラットフォーム

夜が白く溶けるまで　心だけ踊る