Lyric

錆びた扉の向こうから、風が鳴く。

黒い瞳の市松人形「イチ」はゆっくりと目を開けた。

床に転がるカラフルなエレキギター。

弦を弾いた瞬間、世界が軋む。

——廻廊が、呼吸を始めた。

腐った木の壁、絹のような埃

足元で囁く声「まだ終わらないよ」

カラクリ仕掛けの扉が嘲笑うように開き、

瘴気がギターの弦を震わせる

奏でた瞬間　影が後退る

音が祓い　呪いが鳴る

歪んだ廊下　繰り返す夢

吐き気を催す　瘴気

何度も崩れて　また戻る

赤い灯りが瞬き声が重なる

イチはただ　ひたすら前を向く

市の廻廊、鳴り響けリフ

呪いを断ち切る旋律で

闇が叫び、壁が割れる

ギターが唸り、血が踊る

低く、美しく　咆哮する声

——「この音が私の祈り」

カラクリが　引っ切り無しに　作動する

絡まる鎖がリズムを刻む

イチの指が早く動くたび

世界が少しずつ壊れていく

それでも構わない、主を救うまで

音が呪いを貫くから

天井が回る、鏡が歪む

電流のような音が走る

彼女のギターが叫ぶ「退け！」

光が闇を裂き　廻廊が燃え上がる

市の廻廊　響く祈り

壊れた世界を掻き鳴らせ

低音が魂を震わせる

呪いと共鳴する旋律

イチの声が夜を裂く

——救済と破滅のギターソロ

弦の音が消える。

廻廊は静まり返り、風が止む。

イチは微笑む。

「主よ、また歌える日が来ますように——」