Lyric

「この指とまれ」で夏を迎えた。

フィルターを通して、覗く雲は流れないまま。

汗を忘れるほどの青年時代は、

ただの絵になって何も語らないまま。

好きでも嫌いでもないけど、

でも思い出す青はいつも。

寄り添わないで。

いたわらないで。

どの空にも涙したけど、

「夏だから」で終わらせないで。

汗を忘れるほどの何かが、

あの青にはあったようで、

それがふいに夏だっただけ。

春の風で空へ飛んで行ったよ。

赤い風船のリボンに手を伸ばした。

時間をかけて大事に紡いだものは、

いつかのためじゃない。

この夏だけのものだっただろう。

ヒグラシの声も届かない、

8月の空っぽな朝に。

光浴びて、

空気を呑んで、

夏日の香りに誘われて、

最後だったあの日を泣いて、

あの日を笑えるその時には、

夏にそっと言付けてね。

「あれは綺麗な青でした」と。

寄り添わないで。

いたわらないで。

変わらないでいて欲しいだけ。

古い夏を語るような8月は、虚しくなるからさ。

暑さも空もほっといて、

あれがふいに夏だっただけ。

天高く飛んだ君の風船は、

いつか空を彩る。

それは君たちのものだよ。