暮れ残る光

この曲は、「大きな物語」が崩壊し、イデオロギーの対立と情報過多の中で**「明日（あす）の光」**を見失った現代人の孤独と不安を、リアリティのある情景描写で描き出す内省的なブルースです。

「坂の上の雲」のようなかつての理想が消え去り、黄昏のアスファルトをうつむいて歩く群衆の姿が、時代の閉塞感を象徴します。知性や理性が国を救うという言葉が空虚に響き、分断された声がエコーチェンバーに消える中、「この孤独は時代のせいか」と自問します。

サビの**「冷たい鼻水が落ちてゆく／夕闇に暮れ残る 鼻の先だけ」**というフレーズは、社会的な絶望を、極めて個人的で生々しい身体感覚に落とし込み、聴く者に強い共感を呼び起こします。

右や左、伝統や破壊といった極端な選択肢の間で「自分の影さえ信じられない」と彷徨いながらも、歌は諦めません。**「百年前にあの文豪が見つめた闇と同じ闇の中」**で、それでも「せめて君だけは見失わぬように」と、目の前の小さな繋がりの中に光を探し続ける、切実な希望のブルースです。