Lyric

乾いてひび割れた

コンタクトレンズ

きみが脱ぎ捨てた

抜け殻みたいなシャツ

肺の奥まで吸い込むと

愛しい味がした  

きみの残り香を探すように

手を伸ばす

きみがいつも着けている

黒いヘッドホン

耳に当てて

わたしのじゃない甘い香水

夜が腐っていく匂い

見ちゃいけない

でも、もう遅い  

ヘッドホンの隅に絡まる

知らない誰かの長い金の髪

耳鳴りがふいに凪いだ

積み上げた全部が

さらさらと砂に変わってく

ああ 綺麗だなんて

ただ思ってた  

水たまりが映した信号が

赤に変わって滲んでく

冷たい足の指の先から

感覚が遠のいていく

この身体を刺す痛みさえ

もうどうでもよくなる

涙さえ洗い流されていた

心臓が軋む音

水しぶきの音

浴びせられた泥の匂い

染み込んだ雫の冷たさが

きみの嘘の味だった

熱を奪っていく

すべてが偽物だったこと

気付かなければ

でももう戻れない  

ヘッドホンの隅に絡まる

知らない誰かの長い金の髪

ショーウィンドウに映る

見た事ない人の肖像画

ああ 綺麗だなんて

ただ見惚れてた  

「愛してる」って

誰に言ってたの？

あの甘い声は

誰のものだったの？

もう何もかもわからない

ただあの髪だけが

あまりに綺麗で  

ヘッドホンの隅に絡まる

知らない誰かの長い金の髪

耳鳴りさえも

もう愛おしい

崩れ落ちていくすべてが

ガラスの破片みたいに

きらきらしてた

ああ綺麗だなんて

ただたちすくんでいる