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Ten Blocks Out, Coltrane Gazed At The Stars Between Sets
2
First Words To The ShiShi Of Countless Conversations
3
I Used To Be Terrified Of Thunder When I Was Little. How About You?
4
Aimlessly, I Reach A New Place. I Don't Know It, But Feel It Knows Me
5
To Question The Echo, And Know The Hand That Raps
6
When We Dance, The Music Remembers Itself Through Us
7
Mind, Technique, And Body
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Borne On The Currents Of Antiquity, Poised For The Coming Era
9
As The Smoke Weaves And Drifts, It Becomes What It Should Be
10
Sensory Cues Often Trigger Unexpected Inner Music
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By Chance Or The Natural Course Of Things, Even The Most Beautiful Things Will Eventually Decline
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紋切り型のトライバルビートとは一線を画す異界追想のためのリズムとサウンドテクスチャー、ここではないどこかに向け、音楽で祈るエネルギーによって立ち上がるサウンドスケープ。東洋呪術的なグルーヴと近代的なビートミュージックの融解によってヒト以上のスケールへ誘い出す「murmur(マーマー)」は、Akoorum4枚目のアルバムとなる。シグネチャーサウンドである金物類、ボイスサンプルからは彼のフェティシズムとマッシヴな音世界が豊穣に体感でき、リズムループというシークエンスをドアにして音楽的な情感とスピリチュアルな共感へ妖しくナビゲートする。アクーラムは自らのビートメーカーとしてのキャリアやhip-hopといった出身を象徴する”サンプリング”という手法を、手垢のついた表現としてではなく、むしろ ”非-形式的なモチーフ”として自らのインナースペースへ大胆に手繰り寄せる。その挑戦によってサウンドが変容する過程であることが、J-Dilla以降のビート感も残る楽曲群から聴き取れる。hip-hop ビートを出発点に、アンビエント、ニューエイジ、スピリチュアルジャズから強い影響を受けた彼がいま音楽に求めたのは、個別具体的な宗教観ではなく、”音楽の普遍的なスピリチュアリティ”であった。
一曲目の「Ten Blocks Out, Coltrane Gazed At The Stars Between Sets」という曲名は、ジョン・コルトレーンがインスピレーションと普遍的真実の探究のため、ライブ間に10ブロックほど歩き、星空を眺めていたという象徴的な逸話から引用されている。そしてアルバム全体を通して、各トラックは個別具体のエピソードを具象的に説明する意味のない、あくまで音楽が位置づけることのできないエネルギーだということが音楽言語として提示されていく。アルバムのビジュアルは画家の大森勇人が担当。DTMというテクノロジーと、Akoorumの有機的でプリミティブなサウンドを視覚的に結びつけるメディウムの役割を、本アルバムのために描き上げた一枚の油絵で果たす。
Akoorumのごく個人的で実存的な音楽との関係がルーツと哲学の探究を経ることで、リズム/ループ/スピリチュアリティという通奏低音に変換されていく。架空の感覚的楽園をまなざす本作は、エスノ(オリエンタル)・フューチャリズムにも通ずる試みであり、しかしひたすら内的な動機のみによってジャンルを脱辺境化する怪作である。