

ちょいと
行ってくらぁ
そんな 顔して
見るんじゃねぇ
呼ばれた からには
行かにゃ ならねぇ
逃げたと 言われちゃ
性に 合わねぇ
命 ひとつぁ
惜しかねぇ
筋を 曲げるが
一番 怖ぇ
……それじゃあ
ちょいと
行って参りやす
暮れ六つ 鳴った
花川戸
軒の 提灯
火が 灯る
いつもの 路地で
笑い声
いつもの 酒が
匂ってる
そこへ 一人の
使いが 来た
「水野様より
お招きです」
座敷の 空気が
ひとつ 止まり
誰もが 顔を
見合わせた
「行くこたぁ ねぇ」
「罠に 決まってる」
口々 みんな
止めるけど
長兵衛 一人
帯を 締め
「そう 騒ぐほどの
ことじゃねぇ」
怖くねぇとは
言いやせん
命ぁ ひとつ
しかねぇから
されど 逃げたと
言われる くらいなら
そいつぁ
死ぬより
性に 合わねぇ
ちょいと
行ってくらぁ
そんな 顔して
見るんじゃねぇ
呼ばれた からには
行かにゃ ならねぇ
逃げたと 言われちゃ
性に 合わねぇ
命 ひとつぁ
惜しかねぇ
筋を 曲げるが
一番 怖ぇ
……それじゃあ
ひとつ
筋を 通してきやす
夜風を 切って
浅草 抜け
草履の 音が
ひとつ 鳴る
後ろを 見りゃあ
戻れそうで
だから 一度も
振り向かねぇ
水野屋敷の
門が 開き
笑顔で 酒を
勧められ
盃 重ね
夜が 更けりゃ
やけに 静かな
庭に なる
袖を 汚して
「湯でも どうぞ」
そんな 言葉が
落ちてきた
……なるほどねぇ
そういう ことかと
長兵衛 一人
鼻で 笑う
家柄だ
刀だ
御威光だ
こちとら
そんなもん
持っちゃいねぇ
あるのは
名前と
仲間だけ
あとゃ
曲げられねぇ
意地 ひとつ
強ぇ 弱ぇじゃ
ござんせん
勝つか 負けるか
でも ござんせん
見捨てりゃ
寝覚めが 悪いだけ
逃げりゃ
己が 許せねぇだけ
それだけで
ここまで 来やした
それだけで
十分で
ござんしょう
湯気の 向こうに
人影 ひとつ
二つ
三つと
増えてゆく
丸腰 だろうが
構やしねぇ
最初から
承知で 来てやす
「やるなら
堂々と
来なせぇ」
静かな 声が
湯殿に 響く
斬られる 前に
残したものは
悲鳴じゃ なくて
笑い声
ちょいと
行ってくらぁ
そんな 顔して
見るんじゃねぇ
帰れぬ ことぁ
分かってやした
それでも ここまで
来たんでさぁ
命 惜しさに
逃げたなら
明日の 自分に
顔向け できねぇ
名など いらねぇ
褒美も いらねぇ
人は 一代
名は 末代
……それじゃあ
お先に
失礼しやす
- 作詞者
Liminal Reverie, shintaro
- 作曲者
Liminal Reverie
- プロデューサー
shintaro
- 共同プロデューサー
Liminal Reverie
- プログラミング
Liminal Reverie

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お先に失礼しやす
Liminal Reverie
幡随院長兵衛を題材に、講談や歌舞伎で語り継がれてきた「水野屋敷での最期」を描いた一曲。
罠だと分かっていても、呼ばれたからには逃げない。
命が惜しくないわけではない。
ただ、筋を曲げて生き残ることの方が、性に合わなかった。
暮れ六つの花川戸をあとにし、ひとり水野屋敷へ向かう長兵衛。
いつもの江戸の町、提灯の灯り、酒の匂い。
そのすべてを背にして歩いていく、最後の一日を描いている。
「人は一代、名は末代。」
強さではなく、意地でもなく、
最後まで己の筋を通すこと。
それが、この曲で描く“任侠”。
そして最後に残す言葉は――
「お先に失礼しやす。」
アーティスト情報
Liminal Reverie
**Liminal Reverie(リミナル・レヴェリー)**は、 「現実と夢のあいだ」をテーマにした インストゥルメンタル・プロジェクト。 昼と夜のあいだ。 賑わいのあと。 現実と夢が、まだ分かれきらない瞬間。 そこに残る気配、余韻、空気を音にする。 和と洋、対になる二つの軸を持ち、 和:江戸lofi 洋:Liminal Reverie それぞれ異なる世界観で楽曲を制作している。
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