

俺は今 賢島行きの近鉄の中
河川敷でキャッチボールする親子を見てる
昭和一桁の親父は恐ろしく厳しかったけど
ボールを投げる時だけは優しかったな
ミズノのグラブで三遊間へ飛び込んだ
ダイヤモンドの上で息をしてた
20の頃はよ
パチンコにのめりこんでた
あの頃より随分ボールが小さくなったけど
弾き飛ばすのがたまらなくよかった
りんりんと弾け飛ぶ銀玉に
空っぽの財布が騒いでた
30の頃はよ
かっ飛ばすことだけが正義だった
手にマメをつくりながら
ドローボールを打ちっ放してたな
どこへ飛んでいこうが
ボールがなくなろうが
俺にはまったく関係なかった
泥にまみれた汗も
弾けてばかりいた夢も
かっ飛ばしてきた昨日も
すべて俺の青春
40の頃はよ
意地だけで拳を握りしめてた
Jeepに乗って空手に通ってよ
黒のボディと黒のベルトが
俺の拳玉を締めてくれてた
どっちも今は遠ざかったけど
俺のLICENSEはまだ失っちゃいねぇ
50になってよ
キャンプの沼にハマったんだ
パチパチ ユラユラ
焚き火の声に救われた
ダイヤモンド富士に向かって
俺の火の玉はもう一度燃えあがった
意地だらけで固めた拳も
戸惑いに震えた夜も
何かに振り回される今も
すべて俺の青春
そんなこと考えてるうちに
俺は賢島に着いた
タバコ一本ふかし
可怜国の青空を見上げた
もうすぐこの俺も60
影がいつも前に伸びるなら
小さな一歩から何か始めてみようか
それより今 腹が減って仕方がないんだ
だから俺は飛び込んだ
駅前の『九十番ラーメン』に
暖簾くぐったらさ
キクラゲみてぇな 若けぇ店主が
イカした声で
「いらっしゃ〜い!」って
迎えてくれたんだ
たまんねぇ たまんねぇ
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